参宮線、今のうちに~JRホームからの近鉄の眺めが見どころ

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伊勢市駅の記念撮影ボード

2022年10月29日12時

三重県内で見られる「全く同じ駅」

あらためて伊勢市駅です

近鉄と同じ駅になっています。これは本当に「同じ駅」で、分かっている方は分かっていると思いますが、中間改札も何もない。全く止められることなく両社のホームを行き来できます。駅舎は一応、JR側と近鉄側に分かれていますがどちらからでも入れるようになっています。初めて来た人は面食らうのではないでしょうか

スタートした時から別会社で相互乗り入れもなく、どちらも主要駅だというのに同じ改札内という構造は紀勢本線、参宮線と近鉄が並行する三重県内では他にも見られ、津と松阪が同じ形。かつては関西本線の桑名と鳥羽も同様でしたが、桑名は新駅舎誕生に伴い改札が分離され、鳥羽はJR駅の無人化に伴い別の入口となりました(ちなみに四日市はJRと近鉄が徒歩15分ほど離れています)

それゆえ、注意しなければならないこともあります

伊勢市駅には自動改札機が設置され、案内表示で分かるようにJR側の改札で、見たところJR仕様の改札機に見えますがICリーダーについては近鉄用。参宮線はIC乗車ができません。やったことはありませんが、JR系のIC乗車券もおそらく軽快に通してくれるもののJRの駅で降りようとすると大変面倒なことになるはずです。大きな文字で注意していますが、観光地だけに初めて来る人がついついやってしまうことも多いのでしょう

写真はJR車が到着した時の様子。無人駅からの整理券乗車や車内で車掌さんに発券した場合は自動改札は通れないわけで、ほとんどの方が自動改札機を使用しないという、現在の鉄道ではちょっと珍しい光景が見られます

伊勢市の駅舎です。もともとの駅舎を改修する形で現在のものとなっていますが基本は空襲で焼けて再築された駅舎と同じです

JRの駅舎を出るとすぐ参道

駅を降りるとすぐに参道。駅舎の写真で分かる通り、参道はJR側にあり、近鉄の駅舎は伊勢神宮とは逆側でやや寂しい上にJRと近鉄のホーム間の距離も長く参拝道まではやや距離がある形になっているのですが、そこは近鉄(当時は参宮急行電鉄ですが以降も近鉄と表記します)もちゃんと考えたようで当駅乗り入れのわずか半年後に、さらに1駅行った宇治山田を終着駅としました

1駅といってもこんな感じ

グルリ回り込む形で自社としての参拝駅を設けたことが分かります。ショートカットして歩けば電車賃を支払うまでもない距離です

伊勢市という駅名になったのは戦後のこと。意外に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそも自治体名は「伊勢市」ではなく「宇治山田市」。近鉄がやって来た時の自治体名は宇治山田ですから当時としては違和感のない駅名でした。学校名が「宇治山田」なのも、そのためです

では、もともとの駅名は何だったのかというと「山田」。近鉄の駅は山田の次が宇治山田だったことになります。国鉄の駅名も伊勢市誕生から数年を経て伊勢市となりました

ちなみに国鉄の駅名で「○○市」と付けられているのは旧国名と都市名が同じになった場合に混同を避けるためのものが多い。三重県内には至るところに「伊勢○○」という駅があって、はるか彼方の伊勢市内にない駅があります。山口県の「長門市駅」、愛媛県の「伊予市駅」も同様だと思われます

近鉄を見上げる

駅のJR側構内には特急券を含めた近鉄のきっぷ売場が独立して、かなり大きなスペースで設置されています

当駅はJRも管理駅で全線きっぷうりばも設置される重要駅ですが、利用者は3倍も違います。近鉄利用もこちらの方が多いのでしょうから、利便性を考えるとこうなります

ゆっくり進む近鉄

JRと近鉄のホーム間はかなりの距離があると前述しました。その間に巨大な留置線があるからです。列車も停まっているため車庫のように見えるかもしれませんが、正確には「車庫の跡」です。明治期の開業と同時にできた車両基地で、当時は唯一の伊勢神宮への参拝路線として幹線扱いだったことが分かります。この車両基地のおかげで近鉄は基地の向こう側にホームを設置せざるを得ませんでした。その車両基地も7年前に廃止。今は留置線です

ただ車両が消えたおかげでJRのホームからは

近鉄がよく見えます。地図で分かるように近鉄はここから大きくカーブしながらJRをオーバーパスしていくので高架の上り降りはかなり減速します。カラフルな近鉄特急が、ゆっくりとそして数多く見られる光景は飽きない。ある意味皮肉な絶景が生まれたわけですが、この空間を有効利用するには道路も含め、駅の構造をガラリと変更する必要があるため、しばらくはこの光景が見られそうです

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