※訪問は2023年9月10日
「ほどほどに」ゆえの保全
福野駅に到着。見ただけでクラシックな雰囲気が漂ってくる。富山県では北陸本線がやって来る前に現在の城端線である中越鉄道が県内最初の鉄路となったことは以前記した。また国鉄とともに使用する予定だった高岡駅の位置が決まらなかったため、黒田仮停車場を今の新高岡駅あたりに設けて仮開業したことも紹介した。その仮開業は1897年(明治30)5月。その年のうちに線路は城端まで到達しているが、5月の開業は、こちらの福野までだった。設置されたのは仮停車場の他に戸出、出町(現在の砺波)そして福野の3駅。仮停車場は高岡駅の開業とともに消滅したので、残る3駅が県内で最も古い駅となり、当時からの駅舎が今も現存すれば、それがつまり富山県最古の駅舎ということになる
127年前という気の遠くなりそうなぐらい以前のこととなるが、福野駅の写真で見れば想像がつくように、今も当時の駅舎がしっかり残っている。それが当駅と戸出駅。言い方は悪いかもしれないが、これはローカル線ならではの事象。沿線で最も大きい町で利用者も最も多かった砺波駅(高岡を除けば、今も新高岡に次ぐ2位)が、開業後2回も改築されたことでも分かるように、利用者が多かったり幹線上にある駅は改築、改修される運命にある。逆に利用者が少なすぎると今度は簡易化されてしまう。つまり本数、利用者とも「ほどほど」が残りやすい
こういう条件は満たそうとして満たせるもものではなく、それこそ時の流れに任せるしかないのだが、戸出、福野の両駅は条件を見事にクリアしている
さて、次は2駅のどちらが古いのか、という比較になるが
こちらは福野駅の財産票。明治30年5月とは開業時。そして当然といえば当然だが、戸出駅にも全く同じものが張られている。となると「最古」の基準は、いつ建物が完成したかになるが、これについては調べても分からなかった。というか、駅は人または貨物が使用してこそなので、現役であればこそ。開業は同じなので、私としては両雄を並べた上での「最古の駅」としたい
かつてのターミナル駅
現在は南砺市に所在するが、2004年の平成の大合併までは福野町の中心駅だった。さらには加越能鉄道加越線の乗り換え駅でもあった。加越線は北陸本線の石動駅から福野駅を経由、井波町を経て庄川町へ向かっていた路線で、大正期から運行を開始し、1972年(昭和47)まで営業していた。井波駅は寺院風の駅舎で知られ、登録有形文化財として今もバスの待合室などに利用されている。現在は福野駅からバス連絡である
福野駅には、もうひとつ見逃せないものがある
改札を入ってすぐ左手、跨線橋に向かう途中にある、これまたクラシックな駅名板。駅舎に掲げられていたものが、一時破棄されてゴミ扱いとなっていたが、しっかりアクリル板でカバーされて復活した。これだけでも見る価値はある
駅周辺は旧福野町の中心部
有人駅で、みどりの窓口あり。こちらも福光駅と同じく簡易委託ながらみどりの窓口がある(こちらも福光駅と同様に将来は無人化の予定)という珍しい形式。なにげに「自動券売機」の文字がシブい
訪問時はまだまだ暑い9月初旬だったが、冬を感じさせる車両がホームから少し離れた場所に残る駅名標と並んでいた。いつも置かれているのか、冬への準備のために出てきたのかは分からなかったが、きっと今はこちらの車両が、活躍しているのだろう
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