スカイレールに乗車してきました

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スカイレールのみどり口駅

※訪問は2023年8月23日

青春18きっぷを途中下車

時間は朝の8時45分。この日は青春18きっぷで広島県内をウロウロするつもりだったが、朝からあいにくの雨でダイヤが大いに乱れていた。午後には天候も回復するそうなので、しばらく冒険は止めてどこかで途中下車を、と思わず降りたのが瀬野駅

瀬野駅といえば、お隣の八本松までの急勾配区間いわゆる「瀬野八」が有名で、かつては補助機関車のための機関区があり、今も貨物列車には補助機関車が必要な区間

だが現在、注目を集めるのは駅前にあるこちらの駅

スカイレールのみどり口駅

広島短距離交通瀬野線

ちょうどゴンドラがやってきた

ゴンドラではあるが、ロープウェイではない

概念としては懸垂式のモノレール車両を小型化したものでロープウェイではなく新交通システムと位置付けられ、モノレールと同じく法的には「鉄道」となる

みどり口駅には「スカイレールサービス株式会社」の文字

スカイレールの正式名称は「広島短距離交通瀬野線」。これだけだと何のことやら想像もつかない。愛称は「スカイレールみどり坂線」で瀬野駅と新興住宅街であるみどり坂を結ぶ。路線距離は1・3キロ。途中に「みどり街」駅があり、計3駅。平坦な1・3キロなら会社も通勤定期を発行してくれないような距離だが、写真で分かる通り高低差が200メートルもあって日々歩くのはとても無理。それを埋めるべく登場したのがスカイレールである

来春で廃止

前回当地を訪れたのは2019年2月なので4年半ぶりの訪問となる。その時は住宅街の上を行くゴンドラからの眺めに大いに興奮したが、今回は趣を異にする。来春での廃止が決まっているからだ。それまでにもう一度行きたいと思っていただけに、ちょうどよいタイミングとなったが、廃止前提となると心躍るという感じではない

新交通システムなので基本的に駅は無人で運行も無人

券売機でチケットを買う。有人窓口は定期券の発売所である

料金は一律170円。チケットのQRコードを改札機にかざして入場すれば、後は乗車して目的の駅で降りるだけ

駅名標は一応あるが

後は定員25人の自動運転のゴンドラに乗るだけ

朝夕の通勤通学時間帯に増発されるダイヤで昼間も15分に1本の運行が確保されている。山陽本線の瀬野駅も昼間は1時間に4本の運行だ

25年の歴史にピリオド

終点のみどり中央駅までは、わずか6分。とても便利なシステムだが開業以来、慢性的な赤字が続いていた。朝のラッシュ時はゴンドラが満員のエレベーターのように埋め尽くされるが、自動運転というシステムさらには保守点検にも費用はかかる

当初の計画は各地にこのシステムを広め、そうなると車両が増産されてコストも下がる、ここで培ったノウハウをいたるところに流通させれば、さらにコストが下がって技術力も向上する-というものだった。要は先鞭をつけたのだ。だが今も「スカイレール」といえば当地のみの固有名詞状態となっている。広く流通することを前提に多少の赤字は覚悟してのスタートだったが、そのままの状態が続いたため、車両の更新や部品にさらにお金がかかることになって廃止という結論になった

みどり中央から軌道を見上げる。確かに維持だけで大変そうだ

1台やり過ごしてホームから出発を見送る。ゴンドラは何台もあって運行時間に合わせて次の車両がホームにやって来る。現在ラッシュ時は最大で1時間10本もが運転されているが、システム上はさらに増やすことが可能

チャレンジを見守ろう

いわゆる「かぶりつき」を味わいたかったので、1台見送ったわけだが

次のゴンドラもすぐに入線。後ろには後続車両がすでに待機中

定員25人に対して座席数は8だが、すぐ到着するので立っているのが苦痛になる時間ではない

来春以降はバス運行に転換される。当初は今年末での廃止だったが、バス転換に時間がかかるため春まで持ち越しとなったという

天候のため、せっかくのかぶりつきからの眺望も絶景とはいかなかったが、それでも住宅地を見下ろしながらの空中移動は楽しい

スカイレールの利用者は廃止が発表になってから増加しているという。私も他人のことを言えない口だが、朝の8時台という時間にもかかわらず、しっかり同業者(鉄道ファン)はいた。当初の目論見は外れてしまったが、そのおかげで「スカイレール」と名が付く乗り物は全国でここだけなのである

ロープウェイとは違って悪天候にも強い。乗り心地も良い。モノレールとは違って1台あたりのコストも安い。こうした長所がもう少し広がっていたら、後世に伝えられたであろうチャレンジの最後を今は見守ろう

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