快速格下げが報道された石北本線の特急「大雪」に乗ってみた(後編)

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旭川駅での特急「大雪」

※訪問は2024年8月28、29日

かつては北海道縦横断列車

一夜明けて朝の北見駅。前日の旭川の朝は、やや雨模様の少し肌寒さも感じる気候だったが、この日の北見は最高気温30度という予想で朝からすでに長袖では暑いぐらい

前日のうちに北見駅で指定券の発券を受けておいた。所持する北海道フリーパスは自由席は乗り放題で、自由席も楽々座れる自信はあったが、急きょこの日の帰宅を決めたので指定席の権利をできるだけ使っておこうということになった。ちなみに旭川~札幌も同時に指定券を発券した

8時55分の大雪2号が入線。ここから3時間近い特急旅である

「大雪」とは、元々は急行の列車名。戦後間もなくの1951年(昭和26)に網走~函館という超ロング区間を函館本線の山線経由で走ったのがスタート。この後、石北本線部分の運転がなくなったり、石北本線中心になったりと変遷が繰り返された。手元に1968年10月の時刻表(復刻版)がある。いわゆる「よんさんとー」の大がかりなダイヤ改正があった月だが、当時は1日5本の急行大雪と1本の特急が設定されていて他に遠軽で旭川発で名寄本線に分岐する急行「オホーツク」が1本あった

大雪のうち1本は夜行で網走を普通として20時40分に出発して北見から急行へと変更22時23分に出て札幌に翌朝6時19分に到着。列車そのものは、これで終わりではなく再び普通へと変更され、山線経由で函館到着が10時間後の16時35分という出発から終着までが、なんと20時間という北海道を横断、縦断する列車だった。もし今、季節便の臨時列車として運行すれば体力自慢の鉄オタが多数チャレンジするだろう

このように石北本線を担う優等列車だった大雪だが、特急の増発で後に夜行の網走~札幌のみの運行となり、JRに移管してからの1992年に急行廃止の流れを受けて廃止となった。この後、長きにわたって大雪の名前は消えていたが、2017年に25年ぶりに復活する。ただし網走~札幌を1日4往復していた特急「オホーツク」のうち2往復を旭川止まりにして名称を大雪にするという、どちらかというと負の復活だった

朝も利用者は…

指定席に乗車すると車内は

お世辞にも利用者が多いとは言えない。大雪の1本前のオホーツクは北見発6時48分発で、これでは早すぎると、大雪にシフトする利用者がいるかと思ったのだが、そうでもないようだ。北見から約50分で遠軽に到着。前記事でも記した通り、スイッチバックのため客自らが座席を方向転換しなければならないが、乗っている人がこれだけなので降りる人を気遣う必要もないだうと、間もなく到着のアナウンスが入った瞬間に私がクルクルと空席の座席を回し始めると、他のお客さんもそれにならってクルクル。私一人で6席分をクルクル回した

格下げの理由と今後は

大雪の大きな低迷原因のひとつに「毎日運行でなくなった」ことがある。コロナ禍で鉄道全体の利用者が減ったことを機に不定期運行となった。例えばこの記事を書いている10月16日は運行がない。11月いっぱいまでは火水木曜は運休となる。私が乗車したのは8月だったので連日の運行があったと思われる。9月終わりから10月初旬にかけては土日のみの運行となっていた日もあった。これでは定期的に利用できるはずがない

また相次ぐ廃駅や列車性能の向上も無料の快速などとの差別化を図りにくい要因ともなっている。列車交換や待避時間の差もあって一概に同じ物差しにはできないが、現在旭川~北見を1日1往復する快速「きたみ」と比べると、旭川を12時41分に出る大雪1号は北見着が15時44分。一方、旭川を2時間後の14時40分に出るきたみは18時1分着。前者の所要時間3時間3分に対し、後者は3時間21分で旭川から北見まで180キロも走って18分しか変わらない。これでは有料列車の意味をなさない

11時43分旭川到着。当駅始発の札幌行きライラックは同一ホームで15分の乗り継ぎとなる。15分という時間はそれほど苦にはならないだろうが、自由席利用者はせっかく座っていたにもかかわらず再びホームで並び直さなければならないわけで歓迎されていないだろう

大雪が快速化された場合は普通用列車が充当され、編成も1両ないしは2両になるはず。所要時間で差別化を図れないと記したが、快適な居住性は失われる。また青春18きっぷの季節はかなりの混雑が予想され、日常的な利用者へのサービスは低下する

私の実感では宗谷本線と石北本線の特急はかなり苦戦している印象だ。いずれも一部の特急が旭川始発着となっている。利用者減→本数減→さらに利用者減は鉄道においては典型的な負の連鎖だが、そのスパイラルに入っているように感じてならない

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