※訪問は2024年8月7日
ここから木曽路
贄川駅に向かうコミュニティバス「すてっぷくん」の車内
運転席の後ろのパネルはうるし塗り。初めて出会うと面食らうかもしれないが、6月に木曽平沢駅を訪れた私には納得できる。そういえばバスそのものの色もうるしのイメージである
バスの車窓も楽しい。私は鉄道がメインなので、地方においてバスに乗車する機会は決して多いとはいえないが、特にコミュニティバスの場合は主要道路から生活道路に入り込むことも多く、沿線の生活感により触れることができる。鉄路の車窓からはほとんど家などないように見えても実はちょっと異なることも結構ある
そんな中、道路には「ここから木曽路」の案内が出てくる
国道19号を来たバスはトンネルを避けて旧道である中山道を通るが、そこに碑もある。と思うと間もなく贄川駅に到着。10時28分に洗馬駅近くの洗馬駅口から約20分のバス旅だった
雰囲気に気遣う駅舎
贄川宿に基づく木造駅舎
洗馬駅と同じく、塩尻から奈良井まで開業した際に設置されたので誕生日は同じく1909年(明治42)である。ただ当時から、ほぼそのままの洗馬駅に対し当駅は、いろいろ手がほどこされている
木曽路最北となる贄川宿の雰囲気を損なわないように改修されている。立派なお手洗いもある。このあたりは奈良井駅と同じだが、平成の大合併まで贄川、木曽平沢、奈良井の3駅はいずれも楢川村だった(現在は塩尻市)
駅前に贄川宿の解説がある。木曽路の北の防衛拠点として1334年に関所が設けられたとある
標高870メートルの駅
駅の跨線橋にあるイラスト
そしてもうひとつ。細かな気配りが駅の訪問者をなごませてくれる
駅の標高は870メートル。2つお隣の奈良井が933メートルでJR東海で最も高いところにある駅ということは奈良井駅の記事で紹介したが
870メートルもなかなかの高さだ。駅へ向かうバスから見た道路上の気温は26度と表示されていた。時間が11時前ということを考えると、今年の8月上旬の気温としては涼しい方だが、駅のホームで話をしたご婦人によると「暑い暑い。こんな暑さは最近になってから」。このあたりは夏も涼しく、古い家は風通しがよくエアコンも設置されていないという。「部屋の三方をすべて網戸にすると風が入ってくるので後は扇風機だけで十分」とおっしゃったが、続けて「新築の壁の厚い家は当然エアコンが必要だし、近年はエアコンを買う人も増えてきた」とのこと
私の訪問時、平日の昼間とあって駅は閑散としていた。ただ駅の利用者は上記の記事でも説明した通り、2022年の1日あたりは奈良井の89人に対し、贄川183人と贄川駅が圧倒している。こちらも記事で書いたが、周辺の住宅数の違いを表した数字だと思う
国鉄時代末期から無人駅となっている。きっぷ売り場は板で塞がれているが、手荷物の窓口は残されている。装飾が美しいからだろうか
ホームの待合所にもJR東海は、しっかり財産票を入れていて「S18年12月」とあった。戦時中に建てられたもののようだ
地名に入る「贄」だが、神などに捧げたり献上する品物の意味がある。ふだん見かけるとすると「生贄」ぐらいしか思い浮かばないし、ひらがな表記が多いので、文字を書けと言われてもまず無理だし、そもそも難読の部類に入る。もともとは当地には温泉が湧いていて「熱川」と呼ばれていたが、やがて温泉が枯れ、現在の文字を充てるようになったという
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