※訪問は2024年4月2日
※動画あり。音声注意
わずか2年間で再現できなくなった旅
国道沿いにあった新見市営バスの停留所。前回は備中神代駅からこのバスを利用してここまでやって来た。風にあおられ張り紙がゆがんでいるが、よく見ると
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路線バスからデマンド化されたようだ。つまるところ、2年前の私の旅はもう再現できないのである(ただし市岡駅の項で紹介した新見から当駅付近、市岡を経て旧哲西町の中枢部に至る1日2往復の路線バスは健在)。地元の方にとって便利になったのかどうかは私には分からないが、地方都市のコミュニティバスによくお世話になる私はバスに乗車してみると、ほぼ貸切だった、という経験を何度もしている
東城経由で三次へ
複雑な気持ちで駅へと戻り、列車を待つ。今日は三次に宿泊する
駅に隣接して公民館がある。訪問時は屋根の修復工事をしている最中で、初めて来ると駅舎かと思ってしまう建物は今も利用されているようだ
いろいろな鳥のさえずりとともに16時36分発の東城行きがやって来た。この日は春休みの最中で空席はあったが、新見駅へ通学する高校生にとっては帰宅時の貴重な列車(次の列車は2時間後)で2年前に乗車した際は満員だった。岡山県内を走る新見~東城は一応、通勤通学に対応したダイヤとなっていて東城~備後落合より本数の多い平日は1日6往復となっている(備後落合行きの早朝1本は当駅通過)
広島県に入り東城に到着
前述した通り、新見方面と備後落合方面へは本数がかなり異なる。そして三次へはもう列車では行けない。現在は17時前で2時間後に備後落合行きはあるが、その先に行くことはできない
ただ列車はないがバスはある。東城~備後庄原を結ぶバスが1日に4~5往復していて(平日と週末で異なる。1本は広島駅行き)
この17時13分に乗車する。庄原への「最終」で貴重な一本
随分とこぶりなバスだが、すぐに中国自動車道を快走するので驚いた。備後庄原へは40分かからず着いてしまう
東城から庄原までショートカットで、しかも高速利用なので、そりゃ早い。ただし料金は1360円
備後庄原では備後落合発17時11分の三次行きを途中で追い越し待ち受ける形になる。バスの到着は17時49分で芸備線の出発は17時59分。つまり東城、備後庄原とも10~15分程度の絶妙な乗り継ぎで三次まで行けてしまう。坂根駅のバス廃止とは別の意味でまたもや複雑な気持ちになってしまった
再構築協議会の開催
さて芸備線を巡っては、全国初となる再構築協議会が3月26日にスタートした。昨秋にできた法律に基づくもので、国と鉄道会社、沿線自治体が鉄道の在り方や交通手段の再構築について話し合うもので、分かりやすく言うと赤字路線を廃線にしたい鉄道会社が「自治体の抵抗が激しいので国も考えてください」というもの。乱暴な言い方をすると鉄道会社(基本的にはJRとなる)が「国の(廃線)決断を期待する」といいうことになる。大きな全国ニュースとして取り上げられたのは、もしこの法律に基づいて廃線が決まれば、全国各地で多くの赤字路線がドミノ式に廃線となってしまう可能性があるからだ
芸備線の中でも主に対象となっているのは今回列車とバスで乗り継いだ新見~備後庄原で、報道によるとJR西日本が利用者の少なさを説明。各駅の利用者数まで開示したという。数字だけを見ると、駅だけでなく、列車も時間帯によっては1日3往復区間の東城~備後落合では利用者ゼロがあるという
ただし列車の調査は4月の春休みとGWの間のようで、観光客の端境期を狙ったという見方ができなくもない
1987年に国鉄からJRになった際、新見~備後落合は1日8往復が運行され、うち6本が三次直通だった(1本は途中から急行にる運用)。その後8往復が5往復となり、2005年から現在の3往復となった。徐々に運行が削減される課程でJR側と自治体の話し合いができなかったのかが悔やまれるが、ちょうど平成の大合併のころでもあり、鉄道事情まで手が回らなかったという事情もあるだろう
しかし1日わずか3本では利用しようにも利用できないのも事実
その一方で、こういう時に必ず出るバス転換の話だが、誰がどう責任をもって路線を維持するのかの問題もある。過去、廃線後の代替バスが全国で運行されたが、利用者数と資金面でバス路線そのものが廃線になってしまった例は数多い。また現在はバス運転士の不足で都会のバス路線も廃止を余儀なくされている。しかも鉄道の廃線は大きなニュースとなるが、バス路線の廃止ニュースはひっそりとしか扱われず、いつの間にか地方の町が衰退していく
私が利用した東城~庄原のバス路線があることを調べ(おそらく乗っていない)、バスの方が便利で早いという意見もあるようだが、これは単に両方の駅とその周辺を結ぶためだけのもので、途中の町はすべて通過している上、1360円という料金は日常利用ではちょっと出せない金額である
全国各地で地方路線の現状は厳しく、今回訪れた坂根駅は伯備線との接続駅である備中神代のお隣の駅で、そちらを利用する人が多いのでは、と思う方もいるかもしれないが、備中神代駅の1日の利用者は12人(2021年)しかいない。新型特急で話題を集めた伯備線も新見以北の普通の運行は、昼間は3~4時間に1本という閑散区間となっている
コロナ禍になってからのここ数年で鉄道会社の経営も苦しくなり、芸備線ばかりがクローズアップされることになっているが、うまく議論が進まないと「そもそも田舎は要らない」ということにもなりかねない。会議の場所が、新見でも庄原でも三次といった現地ではなく、広島というのが少々不安ではあるが、良い知恵を絞り出せることを期待しよう
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