禅昌寺駅

高山本線全駅訪問のシメ行脚~名刹への最寄り駅はちょっと変わった2線駅

禅昌寺駅の駅名標

※訪問は2023年10月19日

80キロもの移動

打保から南下。高山本線の車窓は美しい。太平洋側へは飛騨川、日本海側へは宮川と、ずっと川に寄り添う。個人の好みにもよるが、私的なおすすめは飛騨古川~猪谷の宮川沿い。乗客も最も少ないエリアになるため、ロングシート仕様のキハ25形でも問題はない。ちょっと身体を横向けにすれば絶景を味わうことができる。秋本番の沿線は訪れたことがないが、色づき始めている紅葉もこれからさらに美しい季節になるのだろう

ということで禅昌寺に到着。下呂のひとつ手前までやってきた

打保発の列車に乗ったのは9時26分。高山で10分の接続があり、禅昌寺着は11時22分

距離にして約80キロ。2時間もの大移動である。何度も言うようだが、当初は全駅訪問などやる気はなく気になった駅だけで降りているうち、急に全駅を訪れてみたくなったので、全く無計画な虫食い状態となったため、このようなことになった。ただ前述した通り、高山本線の車窓は飽きないために救われる

ギリギリの威厳を保つ簡易型駅舎

ホームから駅舎の外へと向かう。ホームからの眺めだけで簡易型駅舎だと分かる

こちらが駅舎。小さな階段を昇って駅舎内の待合室に入る形となっている

財産票が示す通り1997年(平成9)に現在の形となった。ただ名刹・禅昌寺に基づく駅名で最寄りでもあるため、簡易型とはいえ、風格と威厳は保たれている。駅舎正面の写真で分かる通り、駅舎への入口は参拝道のように造られていて、入口の前には禅昌寺の解説と道案内が設置されている

こちらは駅前風景。大きめの広場がある。こうして見ると簡易型駅舎としてはなかなか立派だ

駅の解説文や下呂市HPによると創設は平安時代とされ、多くの寺宝のほか、国の天然記念物である樹齢1200年の大杉を有する

ユニークな2線構造

開業は1931年(昭和6)。下呂~飛騨萩原が延伸された際、その途中駅として設置された。高山本線では戦前からの設置駅でずっと単式ホームの唯一の駅だが、一般的な単式ホームとは微妙に事情が異なっていて棒状ホームながら交換可能な駅となっている

ただしその形式は実にユニーク

最初の到着時の写真でも分かるが単式ホームの向かいに1本のレールがある。こういう場合、えてして昔の交換設備のなごりだったり側線跡だったりすることが多いのだが、ホームのないこの線路は現役である。当駅に停車する列車は上下ともホームのある線路に入り、通過列車(基本的には特急)は上下ともホームのない線路を通る。まるで新幹線駅を見ているようだが、1966年からこの形になっているので、半世紀以上となる

要は特急とのすれ違いや待避はできるが、普通同士のすれ違いはできないというユニークな構造。私の短い滞在時はそのシーンは見られなかったが、ホームのない線路を駆け抜けていく特急「ひだ」は絵になる姿だと思う

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宿も取らずに青春18きっぷで高山本線に突っ込んでみる~下があれば上も中もある

9月8日15時40分

駅名に惹かれる

上呂で降りました

お分かりでしょうが駅名に惹かれました

下呂については知らない人を探すのが難しいぐらいでしょう。下呂温泉は誰もが知る有名温泉地で高山本線においても美濃太田以北では高山と並ぶ重要駅。しかし地元の方には誠に申し訳ありませんが、私は「上呂」があることは結構最近まで知りませんでした。ここはぜひとも降りなければなりません

現在は下呂駅と同じ下呂市にありますが平成の合併の前までは萩原町でした。お隣の飛騨萩原が中心駅。駅を降りるとすぐ川で、高山本線と並行して走る国道41号が駅の横を走り、川の向こうにも街が広がっています

駅舎は開業時の1933年からのもののようで木造駅舎が残ります

ユニークなのは

こちらの部分。駅舎入口の駅名板とは別に、1文字ずつ「上」「呂」「駅」と3つセパレートされていて、しかも屋根付きという凝った仕様。実は当ブログのヘッダー部分にも、こちらの写真を使っていたことがありました。書体も独特というか「駅」の「馬」の部分、これは初めて見ました。手書きでしょうが、いつからあるものか分かりませんでした

駅名がセパレートされているのは、たまに見かけることがあり、印象に残っているのは

高校野球で有名な箕島駅(和歌山県・紀勢本線、2021年3月撮影)。近い場所に2つの駅名板が並んでいました。ただ、こちらは左側が明らかにJR移管後だということが分かる

上呂駅の場合は

駅舎入口にも年代ものの駅名板があります。この2つが見られただけで来た甲斐があったと思いました

中呂もあります

さて、これは旅から帰って調べて分かったのですが「上呂」「下呂」の間に「中呂」もあるのです。もちろん今もある地名。もちろん初めて知りました。高山本線の上りは上呂→飛騨萩原→禅昌寺→下呂と続くのですが、禅昌寺駅の住所が下呂市萩原町中呂。もっとも駅名は名刹であるお寺に由来するもので上呂より先に開業した禅昌寺駅は当初からの駅名。「3つの呂があれば良かったのに」などと鉄オタ的な考えではバチが当たりそう

いずれも、かなり以前からある地名で飛騨川の上流から「上呂」「中呂」「下呂」となっていて、「呂」というのは一般的に川に基づく意味を持ちます。古代の駅家(「えき」と読む宿場。日本に鉄道ができてステーションを和訳する際に用いられることとなった)の当地の名前が「上留」「下留」だったことに基づく、という説があるようです

上呂も小さな階段を上がってホームに向かいます。なお早朝と深夜近くには快速運転を行う普通が通過する無人駅ですが、さわやかウォーキングの開催日に一部の「ひだ」が臨時停車を行うこともあり、多くの人が利用するようです

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