2023年7月20日13時
4年ぶりの開業
降り立ったのはJR四国の牟岐線・田井ノ浜駅。単式ホームのみの簡易な構造です。今回、4年ぶりに開業したというので訪れました
そもそも「4年ぶりの開業」というのが、普通の駅ではないことを物語っています
どういう駅なのかは、降りればすぐ分かります
すぐに広がる砂浜。駅名からも想像できるように、こちらは海水浴場専用駅
一見、普通の駅名標ですが、よく見ると両隣の駅ナンバーはM18とM19。当駅には駅ナンバーは充てられていません。夏の一時期だけ開業する臨時駅。時刻表には「田井ノ浜停車」と注釈付きで表記されます。今年の開業期間は7月15日から8月6日まで。コロナ禍で2020年から海水浴場が休業となっていたため、4年ぶりの開業となりました
停車は1日3往復
牟岐線は徳島県の東側を高知県との県境に向けて走る路線です
全長78キロ。現在の終点は阿波海南駅でDMVとの接続で有名になりました
田井ノ浜は徳島から46キロ。牟岐線は徳島から阿南までは昼間も30分に1本と運行の多い路線ですが、阿南から南側は2時間に1本と列車本数が少なくなります
その中でこの臨時駅に停車するのは
1日3往復のみ。他の列車は通過します
まず駅を降りて目につくのが
こちらの建物。一見、駅舎と思ってしまいそうですが、海水浴場の監視塔。その下ではかつてきっぷ売り場があったようですが、いつまで窓口が使用されていたのかは分かりません。1960年の設置と臨時駅としての歴史はあります
かつては特急が臨時停車することでも知られていて
こちらは2017年夏のもの。普通の他に特急が1往復停まっていましたが、2019年のダイヤ改正で特急「むろと」が1日3往復から通勤通学帯の1往復となったことで、停車はなくなりました
田井ノ浜駅からの脱出ルート
こちらは砂浜から見た駅の様子。訪問日の7月20日は学校の終業式があった日で、列車内は多くの高校生で座れない状況になっていましたが、いかにも泳ぎに行く、という風情のお客さんは車内に見当たらず、田井ノ浜で降りたのは私ともう一人の2人のみ。そろって明らかに同業者(鉄道ファン)でした
曇りということもあって泳いでいたのは、私より明らかに年上と思われる男性1人だけでした。拍子抜けしたことは否めませんが、その前の週末は多くの利用者があったとのことで、おそらく夏休みに入った現在は、かなりの海水浴客がいると思われます
誰もいない海水浴場は写真的には今ひとつかもしれませんが、ある意味ホッとしたのも事実で、お客さんでにぎわう海水浴場というのは、誤解を避ける意味でもなかなか写真を撮るのが難しい。この状況なら撮り放題です
そして駅で降りたからには帰る必要がありますが、1日3往復ということで、来るのも難しいですが、帰るのにもちょっと工夫が必要となります。簡単なのは田井ノ浜より南側の日和佐方面から訪れることで、12時51分着→12時56分発、14時51分着→14時56分発とすぐに対向列車がやってきます。隣の由岐駅で列車交換が行われるためですが、問題が2つほどあって、たった5分の滞在でせっかくの貴重な臨時駅訪問を終えていいのかというのが、まずひとつ。そしてもうひとつは、あくまで鉄道ファンの視点ですが、多くの人が徳島方面から来るはずなので、このパターンは使いにくいのです
海水浴を楽しむのなら別ですが、駅訪問を主とする鉄オタが、暑さを避ける場所もほとんどない環境で2時間滞在できるのか、となると、この炎天下ではなかなか辛いものがあります
由岐までは15分
解決策のオススメは大きな駅である由岐まで歩くことです。列車は結局2時間に1本しかないのですが、駅舎で休める上、バス路線もあります
1駅徒歩といっても意外と近い
ということで歩き始めました
砂浜の端から歩き始め踏切を渡り
右手に海水浴場を見ながら進む。民宿があって
臨時駐車場の横を抜けると
住宅街があります。写真でお分かりの通り
まぁまぁの坂を登っていくことになりますが、坂を下りるとすぐに由岐駅です
実は、この日の一番の驚きはそれから数時間後、牟岐駅などに立ち寄り、16時51分田井ノ浜着の列車に乗っていた時のこと。これは田井ノ浜駅の「最終」で、この後は上下とも1本の列車も来ないのですが、高校生の一人が下車していきました。しかも定期券で。ビックリしました。おそらく前後の駅よりも自宅が近いのでしょう。年間で1カ月も使えない駅の利用。こんな方法もあるんだなぁ、と感心しました
臨時駅としての役割が終わると田井ノ浜駅の入口にはロープが張られ、ホームに入れなくなります。訪問するのなら、ぜひ今のうちに
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