立石駅

日豊本線のもうひとつの難所を訪ねる4~大いにバズった駅でのフレッシュな感覚

西屋敷駅の駅名標

※訪問は2024年4月24日

国道が国と市の境界

雨の中を国道まで出てみる。駅とほぼ隣接するようにビュンビュン車が走る国道10号が並行している

これが国道から見た駅の待合室の様子。後に触れるが、右奥に進んだところが下り線ホームの入口。かつて駅舎があった時代があり、写真の中央部に建っていたとされるが、私は資料を見つけられず、現地で痕跡も探せなかった

そして国道に出る

「西屋敷駅前」という交差点がある。押しボタン式。話はそれるが、押しボタン式信号というのは、押してしばらく経ってから横断歩道が青になるものと、押した瞬間に青になるものに二分されるが、地方に行くと圧倒的に後者の方が多い印象だ。渡る人が少ないからだろうか。この後も2度ほどボタンを押すことになったが、すべて利用者は私のみ。何か申し訳ない気持ちになってしまう

宇佐駅や宇佐神宮への案内表示もある。国道沿いにある左の建物はレストランで、その奥にはラーメン店。訪問時は9時で、まだ開いていなかったが、どちらも現役の店舗のようだ

そして駅と店舗は所属自治体が異なる

西屋敷駅は宇佐市なのに対し、店舗は杵築市である。立石駅の紹介で立石峠を豊前の国と豊後の国の境界と記したが、厳密には峠を下りたこのあたりが国境というか、峠を下りた西屋敷駅付近まで杵築市が食い込んだような形となっている。国道が市境になっていて、雨が激しく歩を進めることができなかったが、国道沿いに国境の碑があるのは、そのためだ

SNS上で話題を集める

さて、この西屋敷駅。昨年SNS上で主役の駅となったことがある。出張で当地を訪れた方が逆方向の電車に乗ってしまい、それに気付いて慌てて降りたのが西屋敷。明るい時間帯だったが、あまりの何もなさと逆向きホームへの移動地下通路の不気味さを投稿したところ、大いにバズって、さらには有名ユーチューバーも後に現地訪問して「凄いところだ」となった

実際には下り線ホーム(大分行き)で降り、上りホーム(小倉行き)へ移動したそうで、私の行動は逆というか乗下車はともに上りホームだったので、上りホームから下りホームへの移動を体験してみた

まず上りホームから下りホームを眺める。写真の右手が国道方面。上りホームからはすぐだが、下りホームの先端はかなり遠くにあるように見える

国道方面へと歩くと、記事の最初の写真の右端にある分岐点へ

国道とは逆方向に。そこには巨大水たまり。これはバズったSNSにもユーチューブにも出てこなかったが、現実的にはかなり前進意欲をそぐものだった

ただ、ここまで来て行かないという選択肢はないので左手を見ると(真っ直ぐ行くとナゾの空き地)

これが下りホームの入口。カーブミラーが丁寧に付いているのが、ちょっとウケた。二輪車の通行ならあるかもしれない

そして何の表示もないが、これが下りホームへの出入口

ちなみにホーム方面の階段を利用せず、真っ直ぐ行くと

田園地帯が広がる。足下はかなり悪いが、いわゆる「自由通路」である

これが下りホームから通路へと至る歩道部分で確かに遠い。最初に下りホームで降りると不安でいっぱいになりそうだ

あらためて知った普通の感覚

ユーチューブでも、駅の構造や本数の少なさが詳細にリポートされていた

ただし私の感じでは、地方の駅にありがちというか、あっても別に不思議ではない構造である。本数が少ないとはいっても1日に10往復以上がある。バス路線は駅付近にはないようだが、その気になれば宇佐駅まで50分ほどで歩けるし、駅の近くには飲食店もある。食事もできるし、頼めばタクシーも呼んでくれそうだ。いわゆる「秘境感」はない

それでもSNSでの投稿やユーチューブを拝見して知ったのは「一般的な普通の感覚」だ。いつの間にか自分自身、このぐらいでは何も感じなくなってしまっていることを改めて教えられた。この記事を読んでくださっている方も、どちらかというと私寄りの人が多いのかもしれないが、考えてみれば1両編成の単行列車に驚く人や、電化と非電化の区別が分からない人も普通にいるのだ

上りホームの「昭和14」の待合所へと戻る。ここには日豊本線でたびたび見かける青い駅名標がある。1時間はあっという間に経過した。ちょっとフレッシュな気分になってやって来た電車に乗る。もっとも下車時と同じで乗車は私一人のみだったけど

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日豊本線のもうひとつの難所を訪ねる3~集落のない元信号場駅には待合所のみ

西屋敷駅の駅名標

※訪問は2024年4月24日

私以外に乗降なし

立石からひとつ小倉方面へと戻り西屋敷で下車。時間は8時50分。事前に予想できたことだが、降りたのは私のみ。入れ替わりに乗車した人もいなかったと思う。小倉方面への隣駅は宇佐。そこまで行けば同駅での折り返しもあるし、手元の「福岡・大分DCオフろう!きっぷ」は特急も乗り放題なので、おそらく移動に苦労することはないが、だからこそ西屋敷で降りたのである。立石と並ぶ日豊本線ダイヤのボトルネック区間を訪れるのが趣旨だ

最初に記しておくが、当初の予定はしばらく来ない電車には見切りをつけ、宇佐まで歩くことだった

この区間の日豊本線は国道10号とほぼ並行して走っている。立石峠も越えた平坦コース。駅間徒歩で最も有効なのは線路とともに歩くことが可能な区間だ。道を間違うこともなく、最短距離で隣駅まで行ける。日豊本線のように電化区間だと少々それても見失うことはないのだが、今回の場合は道路の隣を線路が走っているので、そちらの条件も必要ない。しかも平坦。これだと50分の徒歩もそう苦にならない

しかし残念ながら、この日は雨だった。中津では降っておらず、立石でもパラパラ。天気予報は午後から晴れ。ただ、いい流れだと感じたのもつかの間。西屋敷に到着した私を待っていたのは本降りの雨だった。西屋敷は駅舎のない構造。よりによって、この駅でなぜ?と言いたくなったが、とにかく宇佐への徒歩移動は中止となった

こちらは西屋敷駅の時刻表。8時52分で到着して次は10時9分。1時間20分の待機である

戦後の駅昇格も財産票は戦前

上りホーム入口と下りホーム上にある待合所のみが駅の建造物。というか、この日においては雨を凌げる唯一の場所。ICリーダーが設置されている

駅の開業は戦後の1947年(昭和22)だが、待合所には

かなり年季の入った財産票がある。かなり薄くなっているが、「待合所」「S14 5.2」とある。当駅は1926年(大正15)に信号場として設置された。立石~宇佐が10キロもあるので信号場が必要だったのだろう。臨時や仮の乗降場となった記録は探せなかったが、駅への昇格は1947年(昭和22)。その過程で待合所が必要となった事案があったのだろう

こうして列車が過ぎ去った後の様子だけを見ると一見、単式ホームの駅にも見えてしまうが、右側のちょっと高い所にあるのが下りホーム。そもそも信号場としてスタートしたのだから単式ホームのはずはないが、立石~宇佐が複線化された際にこの位置にホームが設置された。立石駅の記事でも記したが、立石~当駅は複線化の際に下り線は立石峠をトンネルで貫く形にしたため、上り線と下り線が大きく離れている。当駅のすぐ立石側で線路は再び出会う

とにかく、ここから時間をやり過ごさなければならない。信号場としてスタートしただけに付近に集落はなく、私の貸切状態となったのも当然といえば当然だが、傘を手に周辺の散策に入る

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日豊本線のもうひとつの難所を訪ねる2~まるで乗り換え分岐駅のような広い構内

立石駅のホーム

※訪問は2024年4月24日

開業は明治期

あらためて立石駅の紹介を。日豊本線は1895年(明治28)に小倉から大分方面を目指し徐々に開業が始まり、1910年(明治43)に宇佐から立石峠を越えて中山香まで到達。その際に立石駅も誕生した。立石駅が誕生したのは、峠越えの拠点としての駅が必要だったからでもある。立石から中山香まで約5キロ。一方の宇佐までは10キロ以上も離れていた(西屋敷駅はまだない)ため、当時の立石町に当然のように駅ができた

全国の峠越えの駅で見られたように、立石は開業以来、SLの補機を付けたり外したりする重要駅だった。立石峠の逆側にある宇佐駅も広い構内を持つが、同じ理由である。ただ複線電化の時代が訪れると事情は変わってくる。戦後に入って日豊本線に訪れたのは、まず複線化で次が電化。複線化の工事も各地で少しずつ行われ、1966年(昭和41)の7月に宇佐~西屋敷が、9月に西屋敷~立石がそれぞれ複線化。翌年には電化された。現在のいかにも国鉄といったコンクリート駅舎は1965年にできたものだが、真新しい駅舎の完成直後から峠越えの拠点としての機能は失われつつあった

線形の異なる複線

跨線橋からの眺め。2方向に向かって伸びる線路はまるで分岐駅のようだが、目指す場所は同じである。右側が宇佐方面からやって来て大分を目指す下り線で左側は小倉を目指す上り線

立石から西屋敷つまり宇佐へ向かうルート。あえて国道10号での車利用としたのは、国道がぴったり上り線に寄り添っているため。その上に真っ直ぐ敷かれているのが下り線の線路だ。真っ直ぐというか、この区間はほとんどがトンネルである。上り線は開業時のルートでトンネルも約300メートルのものがあるだけ。しかし明治の技術なので何とかトンネル作りを避けるべく川沿いにクネクネと敷設したのに対し、新たに設けられた下り線は3キロ以上ものトンネルを主に走るため、車窓も全く異なる

いずれにせよ複線電化によって峠の拠点としての立石駅は役割を減らしていく。上の写真だと2面4線の構造だが、現在は対面ホームの2面2線

かつては駅舎側から上りホームへ行く際も跨線橋を必要としたが、現在は線路があった部分が埋められバリアフリー化している

駅舎から上りホームへの跨線橋は奥の電柱とともに骨組みだけが残されている

こちらは跨線橋から大分方面を見たもの。左端の線路はすでに現役ではない。線路はこの先、隣駅の中山香まで単線となっている。小倉~大分は原則的に複線だが、当駅~中山香と、その先の杵築~日出の計3区間のみが単線である

駅舎内には地元の手による絵画

駅の周辺は旧立石町の中心地で小さな商店街となっている。まだ朝の8時半で人通りは少ない。駅の1日の利用者は100人を切っている

駅前のロータリー部分も広い。所々遺構が残る

駅舎内には地元の皆さんによる絵画が飾られている。これはかつてのきっぷ売り場と荷物受付の窓口

待合室も同様。とにかく駅前も含め充実した施設だったことは分かる

改札部分には食券式の券売機とICリーダー

ホーム上の木はいずれも伐採されて切り株のみが残る

長大ホームは使用されることのない部分が多くなっている

猛スピードで駆け抜けていった特急を見送り、その後の普通で今度はひとつ隣の西屋敷へと向かう

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日豊本線のもうひとつの難所を訪ねる1~時刻表のちょっとした空白地帯

立石駅の駅名標

※訪問は2024年4月24日

福岡・大分DCオフろう!きっぷ

朝の中津駅。前夜はこちらに宿泊した。一昨日に宮崎空港に到着して以来、ずっと雨。この時点では雨がやんでいてホッとしたが、この後も雨に行動が縛られることになる

手にしているのは「福岡・大分DCオフろう!きっぷ」。現在、9月までの期間限定で発売されている。発券は宮崎空港の券売機だが、ご覧のように福岡県と大分県の新幹線を除くJR線が特急も含め(指定席は3回まで)3日間、乗り放題という、なかなか便利なきっぷである

発売はインターネットのみでJR九州の会員になる必要がある。購入は1週間前までと規定はあるが、クレジットカードが1枚あれば会員登録できる。3日間で8000円はかなり安価で使い勝手があるが、7月からは1万円になるので注意が必要(それでも安価ではある)

大分県内なので宗太郎駅まで有効だが、大分県側から宗太郎まで行くとエリア内に戻ってくる手段はないので、この付近に行くなら宗太郎をまたいで超過料金を支払うというのが現実的な選択になる

ちなみに私は前日

延岡~宗太郎間の最後の2駅訪問を終えた後、延岡まで一度戻って大分県へと入ったが(記事で記した通り、延岡から北川、北延岡への移動は乗車券の現金購入)、大分県へ入る手段は特急しかないため、延岡~宗太郎の乗車券と延岡~佐伯の特急券を別途購入した

宗太郎越えと並ぶ難所の立石越え

本日の最終目的地は博多だが、この旅のひとつの目的地へと向かうため南下。7時51分の電車に乗って

8時27分に立石に到着

先に駅舎を紹介すると

大きく立派な国鉄型コンクリート駅舎である

ただ時刻表を見ると

とても寂しい。小倉から鹿児島まで460キロもを走る日豊本線は南下すればするほど本数が少なくなっていく路線だが、小倉~大分は原則的に複線(ほんの少しの単線区間については次の記事で述べる)で本数も比較的多い。にもかかわらず当駅の時刻表を見ると、特に大分方面においては4時間近くも普通列車の運行がない時間があり、小倉方面についても最大で2時間40分も運転間隔が空いていて、この間は特急のみが30分に1本の高頻度運転を行うという極端なダイヤとなっている

これはなぜかというと、小倉方面からは当駅から2つ隣の宇佐止まりの列車が多く、大分方面からは1つ手前の中山香で折り返す列車が設定されているからだ

宗太郎越は極端すぎるにしても、こういうダイヤは高校生の流動がない県境で出会うことが多いが、この間はずっと大分県である

にもかかわらず、このようなダイヤになっているのは、立石とお隣の西屋敷が立石峠越えという交通の難所に入っているため、現在は鉄道もトンネルと電化があり、道路も立派な国道10号があるため楽々と越えていける区間となっているが、現在は同じ大分県だが、元はというと豊前の国と豊後の国を隔てる国境だった。往来の少ない地域でもあった。このため今も普通の利用者が少ない区間となっている

つまり停車の少ない立石そして西屋敷の両駅を訪ねてみようというのが今回の企画。まずは立石駅をゆっくり見ることにする

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