※訪問は2024年9月9日
隣駅とわずか1キロにわざわざ設置

信濃大町から松本方面へと戻って5駅。約20分揺られて北細野駅に到着
お隣の細野駅の紹介の際に隣駅の北細野駅までわずか1キロと紹介したが、その理由を調べるとユニークかつ重要な歴史があった
開業時の駅名はひらがな

当駅も「おなじみ」の単式ホーム+待合所のみの構造

ホームへの出入りはホーム端にある小さな階段で行い、すぐ踏切がある。左に見える建物はお手洗い。繰り返しになるが、大町市内の駅にはこのような真新しいお手洗いが多くて助けられる
開業は1930年(昭和5)。細野駅が当地に鉄路がやって来た1915年(大正4)に開業したことを思うと15年以上後のこと。南大町駅の紹介で、当地にできた工場への通勤のために信濃大町駅駅から1・1キロにもかかわらず開業したと記したが、北細野駅を降りると駅周辺は住宅街。わざわざ1キロしか離れていない場所に新駅を設ける理由は見当たらないが、開業時の駅名が「おかめ前」だったことを知ると、いろいろナゾが解けるのである
ひらがなのほっこりするような名前だが、このおかめとは最寄りの「鈿女(うずめ)神社」に由来する。地元では「おかめさん」と親しまれ、多くの参拝客が訪れていた。その様子を見聞きした当時の信濃鉄道が「ここに駅があるとと儲かりそうだ」と設置したという。そして駅名は神社名ではなく「おかめさん」の愛称が採用された
「鈿女」という文字は、なかなか難読である。昭和初期に「難読なんで駅名はやめよう」という感覚があったのかどうかは分からないが、駅名はひらがなに落ち着いた
決して「前」ではない
その鈿女神社は駅から徒歩で10分弱の場所にある

駅を出て真っ直ぐ歩くと間もなく国道に出て、そこにコンビニがあり

神社の入口を示す看板がある。ただ北細野駅到着から次の乗車予定の電車までは25分。突然目の前に現れたコンビニに驚いてちょっとした買い物をしているうちに微妙な時間となってしまい

黄金の稲穂の向こう側に見える神社を望んだところで引き返すことになったのは、やや残念。どうもローカル線の駅で思わぬ形でコンビニに遭遇してしまうと「今のうちに」と買い物をしてしまう癖が出てしまう
「鈿」は「かんざし」と読むのだが、当神社に祀られているのは「天鈿(あまのうずめ)」という女神である
とても親しみやすい「おかめ前」駅だが、長くはなかった。1937年に国有化された際に現駅名へと変更となった。わずか7年の駅名だった。駅名変更の理由は分からないが、せめて「鈿女神社前」だったら、神話にも出てくる神でもあるし、そのまま残ったかもしれない。それ以上に、おかめ前のままだったら、かなりの有名駅になっていたことは間違いなかっただろう


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