北小谷駅

大糸線の非電化区間を1日4往復補完する増便バスに乗車~その3(終)

南小谷駅の増便バス停留所

※訪問は2024年9月10日

14人で出発

まず前提として触れなければならないのは、私が乗車したのは青春18きっぷ期間ながら最終日の平日だったということ。夏休みの土日なども含め、何回か乗車したのであれば、標本数も増えるわけで、数字を比べたり分析することも可能だが、標本数はひとつで、しかも平日のお昼すぎだったというお断りを入れさせていただきます

定刻より3分ほど遅れて到着したバス。乗り込んだのは5人。そもそも大糸南線に乗車して終点南小谷で下車したのは2両編成の電車で全部で9人だったので、それ以上の乗車があることは考えにくい。もうひとつ触れておくと大糸南線も松本~信濃大町は通勤通学にも利用される区間で昼間も1時間に1本の運行は確保されているが、信濃大町~南小谷は乗客、本数ともにめっきり減る。特に観光地でもある白馬を過ぎると車内も閑散とする。営業係数はかなり苦しそうな区間である

バスに乗車すると白馬から乗車してきたと思われる先客9人がいて計14人で出発となった(この区間も3駅に停車するが、乗車はほぼないと予測)。乗車方法は列車とほぼ同じだが、青春18きっぷの場合は先にきっぷを見せて降りる駅を告げる。大糸北線の途中駅はすべて無人駅だが、途中の駅または停留所から乗車した場合は降車駅で現金で支払う。ただ結論を先に言うと途中での降車はゼロだった

乗車にちょっと驚き

前記事でも触れたが、駅と道路の位置関係で既存の駅近くに停留所が設けられない場所があり、それが中土、北小谷、小滝の3駅。平素から1日の乗車が限りなく0人に近づいている駅で道路からも離れている。3年前の9月に大糸北線の全駅訪問を行った時も、すべて「貸切」となった駅だけに最初からメモに「0」と書き込んでいたほどだったが、北小谷で2人の乗車があってビックリ。北小谷の停留所は750メートル離れた道の駅に設置されている

北小谷はホームからの姫川の眺めは美しいが、駅前に公民館のようなものがあるだけで何もない駅。シュプール号のために交換設備を設けたが、やがてまち単式ホームに戻ったという歴史を持つ。大糸北線が最後のにぎわいを見せたのがシュプール号だった。今にして思うと「私をスキーに連れてって」の映画とユーミンの歌で始まったスキーブームの一翼を担ったシュプール号。深夜近くの大阪駅ホームが大にぎわいを見せていた光景はいつから消えたのだろうか

話は少しそれたが、北小谷駅の川向こうにある道の駅小谷には温泉が併設されていて、北小谷駅の訪問時は時間があれば行ってみたいと思ったものだ。増便バスをうまく使えば、道の駅で約2時間過ごせる。温泉に入って食事をすれば、ちょうど良いかもしれない。列車の駅までも15分あれば歩けるので、組み合わせると良い訪問ができるかもしれない

2021年の大糸北線全駅訪問時は、55歳以上は3日間新幹線も含めJR西日本乗り放題でグリーンを含む指定席も6回まで乗車できるフリーきっぷを利用した。グリーン車もバンバン乗れるのに大糸北線へ越美北線の各駅訪問などをする人間は、圧倒的な少数派だろうから実態に近い乗車率を目の当たりにできたと思うが、キハ120に16人も乗車している場面は少なかったと思う

この後、バスは2021年に宿泊した姫川温泉の最寄りである平岩へと立ち寄る。駅は新潟県だが、宿まで数分歩くと長野県となる。山中の県境は何もない険しいところ、のイメージがあった私はビックリしたことを覚えている

その時に国道148号が旧道から現在のコースに変わった際、平岩の駅前を通らなくなったことを知ったが、確かにバスは国道から平岩駅へ1度下って、また国道へと戻るコースをとった

自分の車窓側の根知まで来ると糸魚川まで10キロ。街も開けてくる。ここ根知から糸魚川まではバスもそこそこの本数があり、私も利用した

姫川~糸魚川はJR西日本で最後の未乗車になった区間で昨年2月以来の訪問。その時の頸城大野駅は雪に埋もれていた。今とは対照的な光景で11時になろうというのに雪を踏みしめた跡が極めて少なかったことも覚えている

南小谷からここまで乗車は北小谷の2人だけ、降車はゼロという状態だったが、姫川から高校生が2人乗車(こちらもちょっと驚き)。結果的に糸魚川で下車したのは18人

おなじみの旧車庫をあしらった糸魚川のアルプス口

これで1時間のバス旅は終了。夏休みはもっと多くの乗車があったと聞くので、今日は少ない方だったのか。青春18きっぷの期間が終わると、さらに減ってしまうのかどうかは実際に乗車してみないと分からないので、機会があれば秋にもう1度訪れ姫川温泉に泊まりたいとも思っている

来年3月に結果が出た時、どのような数字が発表されるのかどうかは分からないが、青春18きっぷのようなフリーきっぷを乗車した利用者をどうカウントするかも大きく数字を左右するだろう。フリーきっぷは乗車駅と降車駅が把握できないため、通常は数に入れない。芸備線の青春18きっぷシーズンは、ここ数年1日1本の新見~三次間の列車は、押すな押すなの超満員となっているが、JR西日本にこの季節の数字を入れようという意識は感じないので、どのような数字を出るのだろうか?

少なくとも来年3月まではバスと列車を組み合わせると、なかなか楽しめることだけは間違いない。ただひとつの留意点は、ハイデッカータイプの使用バスは乗り心地はとても良い一方で、お手洗いはない。路線バスで旅する際、お手洗い問題は必ずあるのだが、増便バスでも注意していただきたい点である

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大糸線の非電化区間を1日4往復補完する増便バスに乗車~その2

南小谷駅の改札

※訪問は2024年9月10日

所要時間は列車と同じ

南小谷は1日1往復ではあるが、特急「あずさ」が新宿からやって来る。所在地は「小谷(おたり)村」で、なかなか初見では読めないが大糸線に乗車していると何度も繰り返しアナウンスされるので1度乗車すると読めるようになる。電車特急の終着駅が「村」というのも、ある意味凄いことだ

列車が到着すると構内に増便バスの案内アナウンスが流れる。青春18きっぷでも乗車できる旨も放送された。この日は2024夏の18きっぷ最終日である

時刻表によると南小谷から糸魚川まで約1時間。これは列車とほぼ変わらない。ただし必ずしも既存の駅前に停車するわけではなく交通新聞社の時刻表にも欄外に「北小谷駅のバス停留所は駅から約750メートル、中土駅のバス停留所は駅から約1200メートル離れています」と記されている。750メートルはギリギリ許容範囲だが、1200メートルはちょっと離れすぎだろう。大糸線の電化区間内は駅間が近い場所がいくつもあるが、おそらくそれよりも長い

定刻より3分ほど遅れてバスがやってきた。私はバスについては詳しくないが、空港のリムジンバスでよく見られる形式である

なにゆえ山中を通るのか

大糸線は松本と糸魚川を結ぶ105キロの路線。歴史をさかのぼると、元々は信濃鉄道という私鉄が松本~信濃大町に敷設したことに始まる。沿線には観光地も多く利用も好調。1916(大正5)に全通すると、わずか9年後には電化を完了させた

と同時に信濃大町から糸魚川に至る旧千国街道は、新潟から信濃に塩を運ぶ古来からの役割に加え、軍事面でも注目されるようになった。有事の輸送はもちろん、山中奥深くにあることが「敵の攻撃を受けにくい」となったのだ。有事に備えた山中の鉄路には現在の天浜線もあてはまるが、計画時はまだまだ航空機ではなく海上からの攻撃の時代。海沿いの線路よりも山中の線路が「いざ」という時に役立つという発想だった。元は鹿児島本線としてスタートした肥薩線も、海沿いルートを走る鹿児島本線に名称を譲りながらも有事の貴重なルートであり続けた

そのような経緯で昭和に入ると国の手によって糸魚川を目指す工事が始まった。1935年(昭和10)には南小谷を越えて中土まで開業。糸魚川からは小滝までが開業した。それぞれが大糸南線、大糸北線と名付けられた。間もなく信濃鉄道も国家買収。通常、両端の駅にちなんだ路線名は、それぞれの駅名から1文字ずつ取るものだが(水郡線のように事実上の始終着駅から1文字取ることもある)、途中駅の信濃大町から「大」の字をとった大糸線という名称は、国鉄が工事に着手した際に決められ、信濃鉄道の買収後もそのままにされたゆえのものである

ただ小滝~中土は冬季の積雪にも見舞われる山中の難工事で、全線開通となったのは戦後10年以上も過ぎた1957年。国防という当初の役割は終わっていた。そもそも人が少ないと分かっていた場所にあえて敷設した路線。戦後に行われた電化工事が南小谷までで終わったこと、国鉄民営化の際に電化、非電化区間で会社が変わったこと。北陸新幹線の開業で大糸線沿線の観光地へは新幹線利用の方が早くなったことなど、マイナス要素が積み重なった

現在、糸魚川から松本までの経路をグーグル先生に尋ねると北陸新幹線を利用した長野経由のコースが案内される。そちらの方が早い。黒部観光の入口となる信濃大町へも長野からのバスルートが優勢である。大糸線105キロのうち非電化区間はわずか35キロしかないが、糸魚川から白馬、信濃大町、安曇野といった観光地へ移動するのは本数も少なく直行列車もない。いわば負の積み重ねとなっているわけだが、今回の増便バスは今夏の青春18きっぷ期間中は、かなりのお客さんを乗せていたと聞く

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