抜海の宿、ご主人の機転で稚内から脱出

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抜海駅の駅舎内にあった駅名標のイラスト

雨はあがったが宗谷本線動かず

前記事での抜海駅の写真を見ていただければ分かるが、駅訪問時、雨は全く降っていない。駅付近にも雨が降った痕跡はあるものの、すでに「お湿り状態」まで乾いている

だが結論から言うと、この時点で宗谷本線の運休は決まっていて、朝の9時すぎの時点で鉄道での移動は不可能となっていた

話を時系列で戻す

今回、お世話になったのは「旅人宿 ばっかす」。抜海の集落の中心部にある

前々回の記事で抜海駅からの郵便局までの地図を掲載したが、場所はほぼ同じ

宿の場所は郵便局のほぼ向かいにあたる

玄関には「テツ」の心を揺さぶるものも

夕食後の懇談の時間に、ご主人が「今日の夜中に大雨が降る予報です。明日の朝はあがっていると思いますが、宗谷本線は大雨が降ると路盤の問題ですぐに止まるからなぁ」。言葉通り、夜になって雨脚は強まり、寝るころには雷雨となっていた

雨はすっかりあがったが

朝の7時前に起床。雨は止んでいる。ご主人に運行情報を尋ねると「今は運行しているようです」との答えにホッとして周辺の散策

抜海は漁港で宿から出ると、ほどなく日本海に到達する。ただし晴天というわけではないので利尻富士は見えない。前日の車窓からも曇っていて見ることはできなかった。前回、稚内を訪れた際は2泊3日の旅程で車窓はもちろん、レンタカーで日本海沿いを走ったりしたが、その時も山の姿には出会えず。いつになったら利尻富士を拝めるのだろう、そんなことを考えながら

美味しい朝食。もちろん、ご飯はおかわりである

抜海からの列車は10時46分。時間はあるので朝食後、くつろいでいるとタブレットの画面と、それまでもずっとにらめっこしていたご主人が「ちょっとまずいですね」とつぶやく。稚内を6時36分に出た旭川行きの特急サロベツが途中で大幅にスピードダウンしているという

これはJR北海道の情報ではなく、ご主人の独自ネットワークによるもののようだ。ちなみにJR北海道の運行情報では「○」の定時運行となっている。幌延あたりに線状降水帯ができていて激しい雨となっている

「これは良くないですね。まず稚内まで行ってみましょう」。ご主人の提案で、稚内駅まで送ってもらうことに

今日中の旭川着にし東京~大阪並の大移動

前日「もし宗谷本線が動かなかったら」場合の提案がいくつかあった。私の場合、今夜のうちに旭川に向かわなければならないが、まず前提として「稚内~旭川のバスは現在ない」とのこと。北海道の場合、各地から札幌へと向かう交通網は発達しているが、途中の大都市とは意外と結ばれていない

そして「夕方以降、動く場合はあって、それを待つ」というものもあったが「最も確実なのは札幌まで長距離バスに乗り、JRの特急で旭川に折り返す」というもの。線路換算すると稚内~旭川は259.4キロ。旭川~札幌は136.8キロなので、つまり259.4+136.8+136.8=533キロもの大移動となる。これはどのぐらいの距離かというと、新幹線の東京~新大阪が552キロとほぼ同じにあたる。単純な所要時間はバスが6時間、JRが1時間半。もちろん乗り継ぎの時間もあるので、8時間もの長い旅

しかし今回ばかりは今夜のうちに旭川までたどり着かなければならない。過去の経験から、北海道の列車は雨以外にも動物と接触など、いろいろな要素があり、定時運行の壁があることはよく分かっているつもりで、今回の旅もゆったりめの日程を組んでいたが、唯一、明日の根室本線廃線区間だけは、かなりガチなスケジュールとなっている。これらを、まるまる動かすのは無理な相談である。もうひとつの手段として稚内から音威子府に向かう路線バスもあるが、こちらは4時間半もかかる上、そもそも音威子府から先の交通手段がどうなるか分からないため却下である

稚内へ向かう前、ご主人の好意で抜海駅に立ち寄ってもらう。前記事の写真はその時のもの

その道中、宗谷本線の本日運休がJRのHPでも発表された。1日6本の札幌行きバスは次が11時30分発で、その次が13時。「まだ発表されたばかりだし、稚内は雨が降っていないので、おそらく観光客は気付いていない方が多いはず。バスの空席はあると思いますよ」とのこと。稚内駅到着は9時45分

やはりというか当然というか、宗谷本線は本日、完全運休である(旭川近辺の部分運行区間については分からない)。たった5本の運休情報だが、稚内をこの時間以降に出る列車は、これがすべてである

駅ビル内のバスターミナル窓口へと急ぐ。場所もご主人に教えてもらった

窓口は長蛇の列…というわけではなく、並ぶことなく窓口へ。残り3席だったが、とにかく空いていてホッと一息(ちなみに私のすぐ後ろに並んだ方も同じ行動らしく、すぐ残り1席となった。「宿は富良野なんです」と嘆いていた)。17時20分札幌着なので、まともな時間に旭川までたどり着けそうだ

最近のビジネスホテルは待たずに機械でのチェックインとチェックアウトができることをウリにしているホテルが多い。これはこれで善し悪しがあり、夕方の混雑時にホテルに着いて、チェックインの列を見るとウンザリするし、われわれのような鉄オタは始発に乗るため、朝の5時にチェックアウトすることもしょっちゅうだが、前日にその旨を告げなければならないなど気を遣う必要がある。その点、キーボックスにカードキーをポイだけで終わるのは非常に楽

ただし、そこには公共交通機関の情報はない。今回は念のためにホテルに電話。宗谷本線がストップしているので到着が遅くなることを伝えたら「それは大変ですね。お気を付けておこしください」と丁寧な電話応対をいただいたが、ホテル到着後のチェックインは機械で行うのでねぎらいの言葉はない(それは良くない、と言っているのではない。前述したように、そのシステムの方が楽なことは多々ある。念のため)

それでも今回は人と人のふれあいによって生み出されるものが確実にあることを感じました

宿で購入したばっかすさんのタオル。もったいなくて、まだ「デビュー」していませんが、大切に使わせていただきます。というか、今回は果たせなかった宿から駅までの徒歩(抜海駅まで手ぶらで30分歩くと、後から車で荷物を届けてくれるそうです)をぜひ実行してみたいし、何より利尻富士を生涯一度も見られていない。必ずまた伺いますね。ありがとうございました

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