石勝線

予備知識なしで石勝線の1日2・5往復の駅を訪ねる(後編)

川端駅を通過する特急

※訪問は2024年5月25日

※動画あり音声注意

気になるナゾの遺構

川端駅を降りて否が応でも目につくものがある

駅舎と逆側にある建物。駅の跨線橋から行けるようにも見える

外から見ると全容が分かる。「UNITOPIA KAWABATA」とある。印象的な客車は建物の一部なのだろう。こちらは由仁町。「ユニトピア川端」という施設でパークゴルフ場。跨線橋に登ると入口があった

だが扉はガッチリ施錠されていて入れない

由仁町のHPによると開業は1998年(平成10)。パークゴルフ場としては、かなり大規模なものだったようだが10年ほどで営業を中止している

跨線橋から眺めると分かるが、本屋の裏にもうひとつ客車がある。客車はレストランとしても利用されていたようだ。車両は人気列車として活躍したSLニセコ号のものらしい。車両=記録と記憶であるため、せめて車両だけでもきれいに保存できなかったものかと思ってしまうのは鉄オタならではの発想か

駅舎の傍らにはこのようなものもあった

一見すると何のことやら分からない。調べてみると(かなり時間がかかった)、これはダムのミニュチュアである

わずか3キロ。国交省の北海道開発局HPによると建設は1962年(昭和37)。泥炭水で悩まされてきた夕張川の治水のために大夕張ダムの下流に併せて造られたという。もちろんダムは今も現役で役割を果たしている

都会も近い

駅前には周辺地図がある。色あせた周辺案内図はローカル線の特徴でもあるが、こちらはきれいに更新されている。地図で分かる通り、道央と道東を結ぶ大動脈のひとつである国道274号は川端駅の正面で直角に曲がる。レストランや商店があるのも減速で目につきやすい場所だからかもしれない

地図には追分から北へと向かい、岩見沢へと向かう室蘭本線も描かれている。こちらが由仁町の中心部を通るのだが、同線の三川駅も比較的近い場所に描かれている。意外と近いんだな、と今後のためにも調べてみると距離にして約10キロ。とても歩こうという距離ではない。さすが北海道の地図はスケールが違うと感じた

しかし近いといえば、運賃表で分かることがあるのは新千歳空港はすぐそこだということ

千歳駅や南千歳駅、新千歳空港までは車で30分。駐車場さえ確保できれば、北海道の大動脈に乗車可能な位置にある

間に合って良かった

朽ちた遺構の話題ばかりしてきたが、前掲の地図と同様、駅前の植え込みはきちんと手入れされている。駅舎の待合室もお手洗いもきれいに清掃されていた

わずか2・5往復の時刻表にはこんな文言も

そろそろ出発の時間がやって来た

特急街道だけに駅にいると、貨物列車も交えてビュンビュン列車がやって来る

ホームは2面3線構造。かつての規模を感じさせるが、左側のレールは使用されていない。大正から昭和の初期にかけて夕張線は複線だった時代もあった。駅の前後にはスノーシェッドが備わっている。長大列車に備えた名残でホームは長い

跨線橋を降りると「乗車口はもっと前」の案内板があり、かなり歩いてようやく

乗車口がある。その先にも案内口らしい標識があるが

ということらしい。間もなく列車がやって来た。名残惜しいが、去らねばならない

1日5本のうちの1本に乗車。私一人だけ、と思っていたら、もう一人(40秒過ぎから猛然とダッシュしてやって来られます)。跨線橋から乗車口まで遠いのが、こういう時はもどかしいが、10代の方のようでスピードは抜群。何とか間に合って良かった。これを逃すと次の「最終」は5時間半後である

もうひとつの楽しみも

今の時代、特急列車を降りても何もない駅が珍しくない中、上下合わせて1日5本しか停車しない駅でハンバーグ定食をいただけるとは全く意外だった。駅ノートを拝見すると、訪問当日は休みだったお弁当屋さんも現役で営業しているようだ。ちなみにレストラン立石さんは火曜日定休だが、店主さんの体調により休業となる日がある旨が店に張り出されていた

明るい時間に川端駅訪問を行おうとすると事実上この1本となる乗車列車には、もうひとつの楽しみがある。追分駅で20分以上の長時間停車をするのだが、これは室蘭本線の上下列車との乗り継ぎのためで、1日に1回、室蘭本線の上下列車2本と合わせて普通列車同士が3本集合する備後落合状態となるのだ。眺めていて気分が盛り上がるひとときだ

11時半に千歳駅もしくは南千歳駅にいれば良いので難易度はそれほど高くはない。路線内でわずか1駅だけの普通列車しか来ない駅。訪問の価値は大いにあると思う

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予備知識なしで石勝線の1日2・5往復の駅を訪ねる(中編)

川端駅の臨時乗降口案内

※訪問は2024年5月25日

予想外の駅周辺に時間はたちまち

川端駅の列車別時刻表。「普通列車時刻表」とあるが、石勝線内を走る普通は1日にたったこれだけ。新夕張以遠は特急しか走らない。前記事でも触れたが、路線内で普通のみが停車するのは川端駅のみである。私は千歳発11時35分に乗って12時20分に川端着。13時28分で千歳方面へと戻る。これを逃すと18時58分。この日は17時40分の飛行機で帰る予定なので、間に合うとか間に合わないとかのレベルを超越している。ちなみに川端駅付近にバス路線はない。とにかく13時28分がマストである

そこまでが私が事前に得た予備知識。そんな駅前の光景は

こんな言い方をすると地元の皆さんに誠に失礼だが、かなり開けた集落がある。左手のガソリンスタンドは営業中で右手の建物は休みだったが、お弁当屋さん。車の交通量は多い。1時間あるので、とにかくミニ散策。と大通りまで出てみると

立派な商店がある。到着時間に備えコンビニでパンやドリンクを買い込んでやって来たのだが、その必要はなかったようだ。さらにその隣には

営業中のレストランも。これもまた地元の皆さんに失礼な話だが、いろいろ面食らいながら迷わず入店

ハンバーグ定食。ソースが美味しかった。この時期に北海道で定食を注文するとかなりの確率で添えられるアスパラが良いアクセントだった

ということで時間つぶしも何も30分ほどを消化。駅そのものはほとんど何も見ていないので、慌てて戻る

駅の歴史は明治期より

駅に戻る。現在は石勝線の駅だが、元々は追分から夕張を結んでいた夕張線の途中駅だった。私鉄としてスタートした夕張線の開業は1892年(明治25)と、かなり古い。日本で初めて鉄道が走ってから、わずか20年後。川端駅はその2年後の1894年に途中駅として設置された。路線の役割的にもちろん貨物輸送ず主体。木材運搬の駅として活躍した。つまり新夕張~新得の短絡線としての石勝線とは歴史も性格も異なる

新得までの石勝線開通(1981年)により石勝線に組み込まれ、新夕張~夕張は支線扱いとなったが、それでも夕張直通の列車があったため、今よりも停車本数はあった。いわゆる「攻めの廃線」で夕張支線が廃線となる約1年前の2018年2月の時刻表を見ると当駅には上り(千歳方面)6本、下り4本の停車があった。2019年の支線廃線で現在のダイヤとなり、今年3月には川端駅と並ぶ普通のみの停車だった滝ノ上駅が廃止。さらに前の2016年には東追分駅が廃止となっているため(同時期に滝ノ上~新夕張の十三里駅も廃止となっている)

駅名標はつぎはぎの隣駅表示となっている。駅ナンバリングも前述の駅については欠番である

食後のコーヒーでもといきたいところだが、意外と時間がなくなった。駅の敷地内についても見ていくことにする

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予備知識なしで石勝線の1日2・5往復の駅を訪ねる(前編)

川端駅の駅名標

※訪問は2024年5月25日

複線電化区間の2面4線高架駅で待つ単行キハ150

時刻は11時過ぎ

千歳駅の改札に私はいた。千歳駅といえば、千歳線の名称にもなった主要駅のひとつで、JR北海道のドル箱である快速エアポートをはじめ、新千歳空港には行かず苫小牧に向かう電車の始発着駅としても多くの電車が行き交う

時刻表もビッシリ書き込まれているが、右端の追分方面については随分と寂しい。またよく見ると、1日6本の列車があるが、うち4本は追分行きで、追分より先に向かう新夕張行きは2本しかない。最初の写真で分かる通り、その2本のうちの1本、11時35分発の新夕張行きに乗車する

JR北海道ならではのキハ150が既に待っていた。待っていたというよりも、約1時間前に追分からやって来た列車が折り返しを待っていたのだろう。いずれにせよ複線電化区間の高架駅で単行気動車は目立つ。ちなみに停車位置は随分と札幌寄りだが、エスカレーターに最も近い場所が選ばれているようだ

予想より多い利用者

これから目指すのは追分のひとつ先にある川端。千歳の隣駅である南千歳から分岐した石勝線は、追分での室蘭本線との交差を経て新得から帯広を目指す。札幌から帯広への短絡線として敷設された石勝線(新夕張までは事情が異なるが次回の記事で)は、山深い所を通るのと廃駅のため、約130キロにも及ぶ路線ながら、単独駅は川端、新夕張、占冠、トマムの4駅しかない。そしてここからは有名だが新夕張~新得は特急しか走らないため、乗車券のみの利用が可能。また川端以外は追分を含め特急停車駅となっているため、普通のみ停車の駅は川端しかない。つまり千歳から川端に行く手段は1日2本の普通のみ

今回は、その川端駅を訪問する。ただしダイヤ上、現地で1時間ほどの滞在時間があり、時間帯も昼間ということで事前の予習はなしで訪れることにした。滞在15分しかない日豊本線の宗太郎駅とは、このあたりの事情が異なる

列車は定刻通り出発。その時点で12人の乗車があった。意外と多い。さらに南千歳で6人が加わる。この日は土曜日。見渡した感じでは同業者(鉄道ファン)もそれほどいないようには見える。いずれにせよ親子連れ2組を含む18人とは私の予想をはるかに上回る利用者だ

しかし非電化区間の最初の駅である追分で、このうち13人が下車。大量の下車に驚いた。この時間帯は室蘭本線との接続が上下ともないはずなのに何故?と思ったが、この日は土曜日。車内の親子会話を聞いていると「あびらD51ステーション」を目指す人々が多かったようだ

そしてようやく目的地の川端に到着。到着といっても南千歳~追分は約7キロ、追分~川端は約10キロもある上、途中の信号場での長い停車を含めると45分もの時間が経過していた

支度して降りようとすると川端駅では残った乗客5人のうち3人が下車。てっきり私だけだと思っていたが、ちょっと違って面食らう。しかも同業者なし。つまり新夕張まで行く人は2人しかいなかったということだ

川端駅の時刻表。1日2・5往復となかなか見事。北海道の駅では最も停車列車が少ない

コンクリート駅舎は国鉄末期のものとされる。その頃にはすでに無人化されていたはず

駅舎内は広いが椅子が隅っこに4人分と控えめである。それだけに私以外に2人の下車があったことにちょっと驚いたのだが、駅前はというと

あれ?意外と規模の大きな集落だ

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