※訪問は2025年1月15日

新京成電鉄本社のある駅

くぬぎ山駅に到着。周辺は住宅街だけでなく農地も広がる。1955年(昭和30)と比較的歴史の浅い駅。車両基地の最寄りで、1日の利用者数(2023年)は6629人。これは新京成線23駅(京成津田沼のぞく)の中で20番目となる数字で、路線内では決して利用者は多くはないが、車両基地最寄りということで始終着列車の設定もあり、新京成電鉄の本社もある。路線の短い会社は社員を集約できる利点があるため、車庫と本社が併設されていることが多い

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私鉄ストライキの思い出

駅を出るとすぐ本社建物がある

3月いっぱいで新京成電鉄が親会社の京成電鉄に合併されることが決まったニュースに触れた際「これで関東から準大手私鉄がなくなります」との言葉が響いた。久しぶりに聞く「準大手」だった

この記事を読んでいただいているほとんどの人が記憶にない世界だろうが、私が小学生の頃の昭和40年代は春闘の時期になると鉄道会社が決まってストライキを行っていた。今では信じられない話かもしれないが、スト決行となると私鉄が一斉に止まる。そしてテレビは台風情報のように、ずっとストライキに関する速報とニュースを流し続けていた。速報ニュースを知る手段がテレビとラジオしかない時代である

私の記憶に間違いがなければ、私鉄の中でも近鉄と西武はストを行っていなかった。あっても改札ストという改札口が無人になるストライキぐらいだったと思う。自動改札機のない時代なので、利用者には大きな影響はなかったはず。「○○電鉄は労使が合意に至ったため、○時から運行を開始します」とアナウンサーが伝えると、それは大ニュース。どうやって会社に行こうか困っていたお父さんたちは、ホッとして駅へと向かう

ストライキの影響はレジャーにも及ぶ。当時、関西にはいずれも電鉄が親会社のプロ野球球団が4チームあったが、甲子園球場その他の球場への手段がないため、晴れていても試合は中止。ただ日生球場という国鉄(当時)環状線の森ノ宮駅が最寄りの近鉄はホームゲームを行う。ストライキの日は他球場に行けなかったお客さんがやって来るため、ふだんは閑古鳥の当時のパリーグの試合も大いに盛り上がったという。子どもながら「銭にはなったが試合は負けた近鉄」という新聞の見出しに笑ってしまったことを覚えている。しかもスポーツ新聞ではなく、おそらく当時家でとっていたセット紙の見出しだったことが、これも当時らしい

そんなストを毎年眺めながら「うちにもストをさせろ」と国鉄が行ったのが、結果的に民営化へのレールを敷いてしまったスト権ストである

準大手とは

こちらが現在の本社入口

やや話がそれてしまったが、準大手の話題に戻そう。私が見ていたのは近畿圏のニュースなので、ストライキ速報として関西の鉄道会社の一覧が表示される。「まず大手です」との声とともに阪神、阪急、京阪、南海、近鉄が画面に映し出され、会社ごとの運行情報が知らされる。基本的には横並びで「スト決行中」で、あまり抜け駆けはない。そして「次いで準大手です」と表示されるのが、私の記憶では山陽と神戸電鉄。「ふ~ん、山陽電車は準大手なんだ」と子ども心に思った。大手に比べて会社の規模が小さいのだろう、というのは子どもでも分かる。そのうち鉄道会社はストをしなくなった。だから心の中に封印されていた「準大手」という言葉が久しぶりに響いたのだろう

そもそも、この格付けのような表記は日本民営鉄道協会が名付けたもので、私鉄を「大手」と「中小」に分類する中で、規模が大手に準ずるものを「準大手」としたという。「という」としたのは、曖昧な基準で現在は「大手」「私鉄」の2つのみに分類しているから。メディアについては以前の準大手の言葉をそのまましているようだ

ちなみに現在、準大手とされるのは新京成のほかには、いずれも近畿地方の「泉北高速鉄道」「北大阪急行」「神戸高速鉄道」「山陽電鉄」の4社。北大阪急行と神戸高速鉄道については、他の鉄道会社との接続と乗り入れで成り立っていて、泉北高速鉄道も新京成と同様、この4月から南海に吸収合併される

また私がテレビで見た神戸電鉄は現在、中小私鉄にカテゴリーされていて、かつて関東でもうひとつの準大手だった相模鉄道は大手となっている

駅の入口まで戻ってきた。戻るといっても数分の距離。駅前のコンビニでコーヒーを買った

考えてみれば大手だろうが中小だろうが、利用者にはあまり関係のない話である。定時運行でできるだけ早く安く運んでくれれば、それでいい。その部分のみにこだわる同業者(鉄道ファン)は、あまりいないだろう。もともとは労働争議のために造られた言葉でもある。ストライキもなくなった現在はほぼ使用されなくなった言葉だが、またひとつ「昭和」がひっそり消えていくのも、また事実かもしれない

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