本長篠駅

10年以上後のリニア駅を訪問して飯田線を南下~その15 戦時買収から外れ私鉄のままだった路線

※訪問は2024年10月27日

バスの路線図が物語るもの

本長篠の駅舎内にはバスの路線図と時刻表が大きく張り出されている

これはかつてあった豊橋鉄道田口線の代替バスだ

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鳳来寺参拝と材木運搬

こちらがバスの時刻表。すべてのバスが鳳来寺の参拝道と田口に行く

豊橋鉄道田口線は前身を田口鉄道といって現在の本長篠駅から設楽町の中心である田口を結んでいた22キロの路線。現在、県道32号が土砂崩れで通行止めとなっているようだが、元のルートは県道32号とほぼ同じでUターンして寄り道するようになっている箇所が鳳来寺の参拝道にあった鳳来寺駅。終点の三河田口駅は木材の集積に便利なように田口の町からかなり離れた豊川に近い場所にあったようだ

田口鉄道は資本的にも飯田線の前身となる豊川鉄道、鳳来寺鉄道と密接で鳳来寺鉄道は1929年(昭和4)の田口鉄道開業時に、それまでの「鳳来寺」という駅名を田口鉄道に譲り「鳳来寺口」と改めたほどである。鳳来寺までの参拝客と材木の運搬が目的だったが、豊川鉄道、鳳来寺鉄道と同じく国鉄と同じサイズの狭軌、しかも電化されていたという。この規格のおかげで戦後、豊橋鉄道に引き取られることになったが、戦時買収の対象から外れ国鉄にならず、国鉄が運行を管理するというハンパな扱いとされるだけだったことが後に影響する。国鉄の運行管理は戦後に終了。豊橋鉄道田口線として再出発したものの、材木運搬や利用者の減少そして台風による水害の影響で1968年(昭和43)に廃線となった

本長篠駅は構内踏切を渡ったところに島式ホームがあるが、駅舎に面したホーム跡らしき場所にぽっかりとスペースがある。これが田口線の跡らしい。規格が国鉄と同じであるため、鳳来寺観光の直通列車も運行されていたらしい

来春に訪れる変化

その一方で当駅は来春、変化を迎える

すでにスタンバイ完了に見える。これは分かりやすい。ICリーダーの読み取り機だ。来春に当駅までIC乗車できるようになる見込み。飯田線は現在、豊橋~豊川の8・7キロのみIC乗車ができるが当駅まで拡大される。23キロもの延伸だ。この区間内にはさすがに1日の利用者数が1ケタという駅は存在しない。本長篠も2022年の利用者は419人と92駅(豊橋、辰野をのぞく)中28位

ただ立派な駅舎がありながら、改札付近にリーダーを設置するのではなく雨ざらしの構内踏切に設置するあたり、すでに駅舎移転と取り壊しが念頭にあるのか、などといろいろ考えてしまうのだ

18時前、豊橋到着。すでに大都会。前日の塩尻旧駅跡、リニア新幹線予定地、ダッシュ疑似体験から始まり、飯田からの各駅訪問と起伏に富んだ2日間だった。駅近辺で夕食を兼ねて一杯やった後に帰宅。ただしすぐには新幹線には乗らない。せっかくの青空フリーパス。せめて名古屋までは在来線で向かおう

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10年以上後のリニア駅を訪問して飯田線を南下~その14 100歳を超えた駅舎訪問は今のうちに

※訪問は2024年10月27日

ゴールは見えた豊橋まで32キロ

本長篠に到着。時刻は16時を回り、秋の日は暗くなり始めている

ホームのかたわらにある32・1キロのキロポストは豊橋までの距離。飯田から195・7キロもある飯田線のゴールはもう間もなく。これは大阪~神戸(33・1キロ)と、ほぼ同じ距離だが、残念ながら飯田線には25分で結んでくれる便利な新快速はないので、トコトコと1時間かかる

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急増する運行本数

本長篠駅の時刻表。左が豊橋方面、右が飯田方面だが運行本数が大きく異なることが容易に分かる。当駅折り返しの列車が多数あるためだが、当駅が運行の重要駅だということも分かる。もちろん特急「伊那路」停車駅

開業時からの駅舎

本長篠の駅舎。少し離れて撮らないと全景が入らないほど横長の木造駅舎は開業時からのもの

当駅は1923年(大正12)に鳳来寺鉄道によって設置された。鳳来寺鉄道は飯田線の原型となる4私鉄のうちのひとつで、当駅をはさむように大海~三河川合を結び、それぞれ両端で豊川鉄道、三信鉄道と接続した当時の駅名は「鳳来寺」。会社名を名乗る駅となった。鳳来寺は当駅から車で約20分の名刹だが、現実的には湯谷温泉駅からの方が近い。ただ路線バスは本長篠駅から出ている

駅舎にある財産票は

大正12年12月となっている。開業は同年3月なので微妙なズレがある

駅名は開業から6年後に「鳳来寺口」となった。さらに1943年(昭和18)の戦時買収時に「本長篠」と変更。ちょっと話はややこしいが、当時の駅の所在地は「長篠村」で、別に「鳳来寺村」があったため、駅名変更は現状に基づくものだった。しかし戦後にこれらの村が合併して「鳳来町」が発足。過去に手放した駅名が自治体名となった。以降、本長篠駅は鳳来町の中心駅となった(平成の大合併で新城市となる)

駅舎建替えか

そのような歴史を持つ本長篠駅は今年で101歳。鳳来寺鉄道が建設した貴重な駅舎となっている

かつては管理駅でもあったが、現在は新城市の簡易委託駅

この駅舎が移設、建て替えの対象になっているという。現在の駅舎は老朽化している上、地形的に地滑りの可能性があるため、駅そのものを現在の位置から少し北に移動しようという案があるのだが、その場合、JR東海は窓口もお手洗いも設置する予定はなく、早い話が簡易型の駅舎とする構想だという。もし窓口やお手洗いを設置したいのなら、新城市に費用負担が求められる

新城市の答えはまだ出ていないようだが、建て替えの理由が地滑り危機という自然災害が影響している以上、何らかの形での駅舎の変更は免れることはできない。豊橋から1時間で行ける上に本数も多い。101歳の勇姿には早めに会いに行くことをおすすめします

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