JR北海道

残された留萌本線を全駅乗降~期間限定の終着駅

石狩沼田駅に到着

2023年5月26日12時50分

かつての乗り換え駅

深川から、わずか15分で留萌本線を「完乗」となりました

駅名標は終着駅のものになっています

「1日1本だけ」が有名で2020年4月に廃線となった札沼線の新十津川~北海道医療大学。その「沼」が、ここ石狩沼田。当駅から札幌まで直接線路がつながっていました。ただ石狩沼田~新十津川間が名松線の項でも触れた「赤字83線」の指定を受け1972年に廃線、札幌近郊が電化され通学通勤路線となる中、路線名に名を残す存在となっていました

その乗り換え駅が現在は期間限定の終着駅となっています

それでも乗り換え駅らしい2面3線構造を保ち、列車交換も可能でしたが、約20年前に現在の1面1線構造に。ただ当時のホームだけは残っています

人名→駅名→町名

石狩沼田の駅舎です。札沼線が廃線となった1972年に改築されたもので国鉄色の濃い建物

沼田町のHPによれば、1894年(明治27)に富山出身の沼田喜三郎という方が移住したのが町の始まり。当時の村名は「上北竜(かみほくりゅう)村」。鉄道の歴史も古く、1910年(明治43)に深川~留萌が開通した際に駅も開業。設置場所が沼田氏所有の敷地内にあったため、沼田駅となり、その12年後に村名も沼田村となりました。駅名が町名になった例ですが、その町名が人名に基づくものというのは。なかなか興味深い。「石狩」が付くようになったのは、さらにその2年後の1924年で上越線に沼田駅が開業したため。普通、後からできた駅に国名などを冠するものですが、こちらは逆となっています

駅名が町名になったぐらいですので、駅周辺が町の中心部

滞在時間短く

こちらは時刻表。到着時間付きという珍しいものとなっていますが、おそらく留萌方面行きの部分が、そのまま転用されたと思われます

この時刻表を見ると深川からの列車は当駅で15分ほどとどまって折り返すことがよく分かります。ただ例外があって13時43分到着の列車については折り返しの設定がありません。今回の各駅乗降において困ったひとつで、1面しかないホームでこの車両はどうするのか、と不思議だったのですが、後に沿線で見かけたところでは、客扱いをせず、そのまま回送で折り返していました。たった14キロ、15分で終わるのだから、客扱いしてください、と泣きそうになる。この短い区間ですら回送扱いをするということは、よほどお客さんがいないのでしょう。それでも現在も1日100人以上が利用する駅。利用者の主力が高校生だということがよく分かります

そのため私が乗ってきた列車は9分しか滞在時間がなく、慌ただしい時間しかありません

入場券を購入

駅舎内を見ていきます

一見無人のようですが、簡易委託となっていて平日の7時20分から17時まではきっぷ販売を行っています

終着駅となったことを告げる「ようこそ」の看板

その一方でラストランの紙はまだ窓口にありました

ストーブもあったりします。その上にある電話番号はタクシー会社のもののようですが「明日萌」の藻場が入つています。沼田町といえば、朝ドラの舞台となった「明日萌駅」ですよね。石狩沼田から2つお隣の恵比島駅が1999年の「すずらん」の舞台となる「明日萌」という駅になり、セットの駅舎はずっと観光名所となっています。その人気で、数年間は「SLすずらん号」も運行されていたほど

石狩沼田~留萌が廃線となることについて、地元では恵比島駅までの2区間を存続してくれるよう依頼もしています

駅舎内では「すずらん」のずっと前となる昭和の旧駅舎が存在していたころの写真が展示されていました

こちらの部屋はちょっと分かりません。札沼線の廃線後に運行されていた代替バスの乗務員用のものでしょうか

窓口で北の大地の入場券を購入しました

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残された留萌本線を全駅乗降~全長14キロとなった最短の「本線」

石狩沼田駅に到着

2023年5月26日11時

痛恨の時刻表の勘違いで行程練り直し

この日は11時5分に特急「ライラック」で札幌から深川に到着。駅名標で2つの行き先がありますが、向かおうとしているのは「きたいちやん」方面。ただこの時間に到着してしまったことが痛恨で、本来は2時間前に着いているはずでした。前夜は室蘭に宿泊したのですが、5時25分だった始発を6時25分と勘違い。4時過ぎには起きていた(この季節の北海道の夜明けは早くて慣れていないと起きてしまう)にもかかわらず、間に合わなかったのは実に痛恨

事前の計画では深川発9時13分に乗れば、バスや徒歩を利用して14時には全行程を終えるはずでしたが、9時13分の次は12時36分。そうなるとバスの時間帯も悪く、もうどうしようもありません

ということで深川でラーメンと天津飯のセットを食べながら作戦の練り直しです

留萌本線の現状

今年3月いっぱいで石狩沼田~留萌間の約36キロが廃線となった留萌本線

現在は深川~石狩沼田の14・4キロが残るのみ。この距離は全国にあるJRの本線では最短。深川を除くと4駅しかありません。現行区間も3年後の廃線が決まっていて、2016年12月に留萌~増毛の約17キロが廃線となったことから段階的に短縮されてきた路線は、あと3年で姿を消します

留萌本線に乗車するのは2012年の6月以来、11年ぶり。留萌駅の廃止までには来たかったのですが、なかなか簡単に行ける場所ではないので、石狩沼田まで短縮されてからになってしまいました

そんな中、ようやくやって来られたのに時刻表の勘違いは痛い。その代わりと言っては何ですが「全駅を乗車または下車」から「全駅乗降」に変更。ダイヤ的に長い長い待ち時間が生じますが、夕方までかけて全駅乗降を行うこととします

1日1本の列車で石狩沼田へ

深川駅のホーム。向こうに見えているのは、留萌本線の専用ホーム。単行中心なので屋根の部分が短い

写真を撮っている側のホームは4番線で留萌本線用は6番線。5番線はホームのない中線に割り当てられています。4番線は旭川方面への普通が主に使用しますが、列車の進行方向が逆の留萌本線も使用

跨線橋から次の留萌本線の発車番線が分かるようになっています

もっとも私が乗車する列車は旭川始発の石狩沼田行き。留萌本線は1日7往復ですが、うち1本は函館本線に乗り入れる旭川始終発の運行で、その1本が深川発12時36分のものでした

旭川方面からのお客さんの多くは深川で降りていきましたが、それでも十数人のお客さんが乗車。途中駅でポツポツと降りていき

数人のお客さんとともに終着駅の石狩沼田で降ります。到着は12時51分。わずか15分で「完乗」となりました

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小幌駅に行ってきました(後編)

小幌駅を通過する貨物列車

2023年5月24日

※音声注意

こんなところでご近所さん

JR北海道の保線作業の方々とともに降り立った小幌駅ですが、では仮に職員の皆さんがいなかったら小幌駅独占となっていたのかというと実はそうではありませんでした。私ともう一人、男性がいらっしゃいました。単行の車内で数人しかいないお客さんで同業者(鉄道ファン)はいないと思い込んでいただけに、ちょっとビックリ。なかなかこういう駅での独り占めというのは難しい

そして、さらにビックリしたのは、少しお話していると関西弁だったので、どこから来られたのか尋ねると、お互いの自宅から電車で5分ほどの距離だったということ。ここで会いますかね、ご近所さんと。少し前には宮崎の都城駅をウロウロしていたら以前勤めていた会社の同僚と会ったり、宗太郎駅の帰りにツイッターのフォロワーさんと会ったり(もちろん初対面でしたがツイート内容などで互いを特定できてしまった)と、世の中狭い

各所に注意書き

JRの職員の皆さんは保線というより保全の仕事だったようで、ホームや駅名標、駅ノート入れなどを順番に見て変わったところはないかをチェックしています

小幌駅を独占とはいきませんでしたが、このように多くの人がいると、安心できることもあります。当駅にはいたるところに

マムシや

スズメバチに対する注意書きがありました。クマが出没した情報はなく、あれば駅そのものの存続危機となってしまいますが、マムシでも相当におっかない

先日まで紹介していた名松線の項でもシカやサルに出会った経験に触れましたが、大自然あふれる夏の北海道は、やはり野生の皆さんへの注意が必要

時間内にどこまで行けるのかは分かりませんが、一応、駅から海岸への道はあります。この岩屋観音と洞窟は、ある意味有名ポイントで、関心はありますが、保全の方々が行った先で引き返しました。それでもこのようなガイド標識や小径は放置していると、あっという間に草木の中に埋もれてしまうはずで、定期的に整備されていることがよく分かりました

多少の変化も

9年前の訪問時は、わずか8分だったので記憶を掘り起こすべきこともないのですが

完全に朽ちていてドアも外れていたトイレはきれいになっていました

保線のための建物は新調されているようです

洞爺方面ホームの上にあるのは待合所ですが、今は入れなくなっています。かつて、ここで生活している人がいて話題になったこともあります

魚のキャッチ&リリースについては前回もありました

こちらは駅ノート入れ

廃駅危機を乗り越え

小幌駅には廃駅の危機がありました。2015年7月、JR北海道は豊浦町へ廃駅の方針を通達。理由は「鉄道ファンだけのために費用や手間を使って駅を存続させる意味があるのか」というもので、確かにその通り。元々はすれ違いのための信号場として設けられたものですが、現在は複線化されていて、その意味はほとんどない。また夏場は多くの鉄道ファンが訪れますが、かなりの人が青春18きっぷ使用のはずで、JR北海道に入るお金も少ない

これに対し豊浦町は「重要な観光資源」として駅を維持するための経費や人的協力も含めた申し出と交渉を9カ月もかけて行い、1年ごとの更新で駅は存続しています。先に挙げた標識や小径の整備、今回たまたま遭遇した駅の保全など、駅ひとつ維持するのにも、これだけの手間がかかるのだと感じていただけに、感謝の念でいっぱいです

ただ、その一方で小幌から洞爺へと向かう礼文、大岸の2駅が廃駅の危機にあります

※音声あり

滞在中は特急「北斗」の通過と貨物列車の通過を見ることができました。北斗については分かっていましたが、貨物については知らなかったので、とても良いものを見られた。もっともここで見られる貨物列車も将来は不透明なのですが…

JR職員の皆さん、ご近所の方とともに7人で折り返しの列車で洞爺へと向かいました

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小幌駅に行ってきました(前編)

小幌駅の駅名標

2023年5月24日

※音声注意

貸切なるか

時刻は15時。ワンマン運転の次の駅に「小幌」が表示

実は少し前まで「貸切達成か」とドキドキしていました。東室蘭を13時56分に出た普通列車は小幌まで70分。途中までは帰宅の高校生もいて単行(1両編成)の車内は座れない人もいるほどで混雑していましたが、洞爺、豊浦を過ぎると乗客は5人。「これは貸切なったか」と確信めいたものを持っていました。わざわざ平日のお客さんの少なそうな日を選んだのも、小幌駅を1人で訪れてみたい、それが理由。道中、明らかに同業者(鉄道ファン)と思われる人がいて、これはダメかな、とあきらめたものの、なぜかその方は洞爺で降りていきました。「うーん、私の見立てが間違っていたのか」と思いもしましたが、これは「朗報」(もっとも、この方とは3日後に廃線が決まっている根室本線の車内で再会してビックリ)

ただし「貸切」「独り占め」の夢は、その後、あっさり破れることになる。保線、保全担当と思われるJR北海道の職員の方が5人乗り込んできたからです。本数の少ない路線だと、こういう方々は車で回るのが普通。わざわざ列車で行くのは車で行けない小幌駅に行くからに間違いありません

まぁ、路線の安全確認の方々なので、こればかりは「おつかれさまです」と言うしかありません

9年ぶりの訪問

※動画音声あり

15時6分、小幌駅に到着。最後に「フォー」と鳴らしてくれたのは職員さんへの「おつかれさまです」の意味なんでしょうか

当駅には9年ぶりの訪問です。前回は2014年8月25日でしたが、当時のダイヤは同じように洞爺方面から乗車して小幌駅での折り返しが来たのは8分後、滞在時間はほんのわずかでしたが、今回は40分以上滞在することができます

小幌駅とは

この記事を読んでくださっている方で当駅を知らないという方は、あまりいないでしょうが、簡単に説明すると、とにかく列車でしか行けない駅として有名です

わざわざ地図を載せる意味があるのかどうか分かりませんが、三方を山、もう一方を海に囲まれ、特に山は険しい崖となっている上、まともな道路はなく、車では当然行けず、徒歩でも到達困難。要は外に通じる手段は列車のみ(船という手段も可能ではある)という駅

トンネルとトンネルの間にはさまれていて2面2線構造。戦時中の1943年に信号所として設置。道内の石炭など鉄道の軍事需要に応じるため、当時は単線だった路線に信号所(すれ違い施設)を増やす必要があり、前後がトンネルのこの場所で蒸気機関車の煤煙を避けられるのが設置理由でした

正式に駅に昇格したのはJR移管時。それまでは北海道でよく見られた仮乗降場として客扱いをしていたそうですが、戦前はいくつかあったとされる民家もやがてなくなり「誰も住んでいない、車でも徒歩でも行けない駅」として注目を浴びることになりました

アクセス方法

こちらは長万部方面の時刻表。そして

東室蘭(洞爺)方面への時刻表。写真で分かるように、東室蘭方面が1日2本、長万部方面が1日4本と変則的なダイヤとなっています。これは東室蘭方面の午前の列車が当駅を通過するから

豊浦~長万部間の普通列車はどんどん減らされていて、現在は1日4往復しかありません。前回の訪問時は8分の滞在時間だったと記しましたが、当時は本数がもっと多く、他の訪問パターンもありました

今は当駅に行こうとすると方法は限られていて、現実的な滞在時間や日没などを考慮すると、午前中は長万部方面1本しか停車列車がないため、利用はできず、私の行動パターンとなった15時6分に洞爺方面からやって来て、15時50分に長万部からの洞爺方面行きに乗るか(滞在44分)、長万部方面から15時50分に到着して、17時34分の長万部行きで折り返すか(滞在104分)、もう少し粘るつもりがあるなら、15時6分の長万部行きで下車し、17時34分の17時34分の長万部行きに乗るか(滞在148分)のせいぜい3パターン。19時台や20時台の列車は日没を考慮して除外します(正直、この時間の停車の意味が私には分かりかねます)。ただ季節によっては、17時台でも暗いでしょうから、滞在時間を含めても私と同じ行動がおすすめです

それでも先日訪れた宗太郎と比べると、アクセスははるかにしやすいと思います。延岡での宿泊が絶対条件となる宗太郎に比べると、特急を利用すれば大阪や東京からの日帰りも可能(そんな人はいないでしょうが)です

約40分の滞在を楽しむことにしましょう

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